短期決戦の勝ち方/野村克也

 

短期決戦の勝ち方 (祥伝社新書)

短期決戦の勝ち方 (祥伝社新書)

 

 

 今年の2月に惜しまれながら亡くなられた、日本球界屈指の名将・野村さんが語られる「短期決戦の勝ち方」です。

 

 よく野球の日本シリーズクライマックスシリーズといった”短期決戦”はレギュラーシーズンとは別の戦い方があると言われ、阪急や近鉄を何度もリーグ優勝に導きながら、近鉄時代は優勝をほとんど手中にしながら”江夏の21球”に宿願を阻まれて、ついに日本一になることが無かった西本監督や、中日、阪神楽天と監督をされたチームすべてでリーグ優勝を果たしながら、なかなか日本一になれず、おまけに北京オリンピックの惨敗で”短期決戦に勝てない監督”というレッテルを張られてしまった星野監督のことを思い起こします。

 

 長いリーグ戦だと圧倒的な戦力を持っていれば、かなりの確率で優勝を見込めますが、長くても7戦とかで決まってしまう日本シリーズや、ましてや3戦で決まってしまうクライマックスシリーズのファーストステージなど、故障者やチームの勢いでどうにでもなってしまうところがあり、そういった不確定要素にも打ち勝ってこその名将といえるところがあるようで、短期決戦に見合った”将たるもの”のあり方を語られます。

 

 まあ、色んな要素があって一口には言えない部分はあるとは思うのですが、野村さんによると、精神論に偏りがちな監督は短期決戦に弱い傾向が強いことを指摘されていて、かつてはそういった色彩の強かった東京六大学出身の監督…前述の西本さんも星野さんも該当するようですが…がそうであると指摘されています。(まあ、結局星野さんは楽天で一度日本一になっていますが、野村さんは、あの時は田中将大投手がいたからだと切り捨てておられます(笑))

 

 あとは短期決戦に強い選手のタイプと言うのを紹介されていますが、真面目ー不真面目、優等生-劣等生の2軸で選手をカテゴライズして、”不真面目な優等生”が最も活躍の可能性が高いことを指摘されているところがオモシロく、その代表格として江夏投手を挙げられているのが象徴的だな、と感じます。