ID野球で一世を風靡し、2020年に亡くなられた名将野村監督によるキャッチャー論です。
冒頭で、ここ最近、キャッチャー出身の監督が減ってきており、野村監督自身が育てた古田選手や、横浜~中日で活躍した谷繫選手など、球界を代表するような名捕手が減ってきていると指摘されていて、こういう傾向が続けば、日本野球の緻密さが失われてしまいかねないと警鐘を鳴らされています。
元々野村監督の現役時代当初は、キャッチャーのリードと言っても経験則によるカンに基づいたモノだったということで、配球の問題で痛打されたとしょっちゅう怒られたようですが、だったらどんな球が良かったんですか?と尋ねても、「自分で考えろ!」とさらに叱られて、結局糾弾する側にも確たる回答はなかったようです。
そんな中で野村さん自身が、カウントごとにこのバッターはこうなれば打ち取れるということを過去のデータを調べ上げて配球を考えるようにしたことが、のちにご自身がヤクルトの監督時代にID(Important Dataの略なんだそうです…)野球とのキャッチフレーズをつけて一世を風靡するデータ重視の采配の礎だったようで、日本のプロ野球におけるキャッチャーのリードの考え方を一から作り上げたのが野村さんだったようです。
ヤクルトの監督時代のオリックスとの日本シリーズにおけるイチロー対策などヒリヒリするような配球の妙を実戦での事例を踏まえて紹介されているのも、実際の場面を思い起こして、かなり興奮します。
今後もこういった頭脳戦を交えたエキサイティングな対戦が続くように、MLBの皆さんは「野村の遺言」を胸に刻んで取り組んでもらいたいところです。