一軍監督の仕事/高津臣吾

 

 

 以前、ヤクルトスワローズの高津監督が二軍監督を務められていた経験をつづられた著書である『二軍監督の仕事』を紹介しましたが、この本はその後一軍の監督に就任し、ご自身が二軍監督時代に育てられた「村神様」こと若き主砲村上選手などの大活躍もあって、2021年シーズンに日本一になられたことを中心に語られた本です。

 

 残念ながら2022年はリーグ連覇を果たしながらも、2021年同様オリックス・バファローズとの日本シリーズに敗れ、2年連続の日本一とはならず、高津監督自身も悔し涙を露わにされていたのが印象的でしたが、それでも圧倒的にリーグ制覇を果たし、スワローズの新たな黄金時代を気づきつつあるようにも見受けられます。

 

 そういう継続的な強さを発揮できているのは、二軍監督時代からの「育てながら勝つ」ということを一軍でもある程度重視されていることがあるようで、二軍と比べると一軍は遥かに目の前の勝利の要請が強いワケですが、それでも長期的なチームの強化とできる限り両立しようとされていることが、ここのところの強さなのではないかな、と思えます。

 

 これまで「黄金時代」と言われる時期を経験したNBLのチームは、巨人や西武、ソフトバンクなどいくつか名前が浮かびますが、ヤクルトもそういったチームの一つに数えられるとは思うのですが、他のチームと違うのが、何度も断続的に黄金時代を経験し、それぞれの時期において、かぶっているメンバーがほとんどいないことだということで、度々浮かび上がってくることができるのは、かつて監督を務められた野村克也氏の選手育成の理念が脈々と息づいているからだと、愛弟子を辞任する高津監督はこの本で再三強調されています。

 

 今シーズンも昨シーズンのリベンジを果たすべく、他チームから選手をカネで強奪してくるどこかのチームみたいにするのではなく、自前で育成してチームを強化することの有効性を証明してもらいたいものです。