変なおじさん/志村けん

 

変なおじさん【完全版】 (新潮文庫)

変なおじさん【完全版】 (新潮文庫)

 

 

 今年、コロナ禍拡大の初期に、コロナウィルスで亡くなられた志村けんさんの自伝的なエッセイ集です。

 

 志村さんの生い立ちから、ドリフターズとしてデビューされて以降のコメディアンとしての歩み、さらにはコントへのこだわり等が詰め込まれているのですが、ワタクシ自身子供の頃に『8時だョ!全員集合』を見ていたワケですが、単なるドタバタ劇かと思いきや、かなり緻密な計算の下に作られていたことを紹介されていて、意外な気もしましたが、よくよく考えると、単なるドタバタ劇だったら、あそこまでウケなかったんだろうなぁ、とも思わされます。

 

 ドリフターズとしての活動は後々の志村さんの活動のベースとなり、大きな影響を及ぼしていたようで、この本の中で再三『8時だョ!全員集合』でやられていたような劇場でのライブでのコントをやりたいとおっしゃられているのとともに、ドリフターズ自体がかなり緊密な関係にあったということで、そういう”あ・うん”の呼吸でコントを作り上げていくことに、その後の活動でもこだわられていたようで、『バカ殿』での田代まさしさんや桑野信義さん、いしのようこさんといった常連メンバーと長く取組、志村さん主導ではあるモノの、メンバー全員で練り上げて行かれた様子を紹介されています。

 

 そんな中で、短期間で結果を求めるテレビ局との葛藤も吐露されており、長い目で良質なコントを育てる姿勢にかけていることを嘆かれています。

 

 亡くなられた直後の、志村さんの事績をたたえる報道でも、コメディアンとしての職人的な姿勢を紹介されていましたが、パッと見、単純なドタバタ劇に見えるコントでも、ホントに細かいこだわりを練りに練って一つ一つ積み上げて行かれて行かれていたようで、そういう側面はもっともっと受け継がれていかないとモッタイナイ!と痛感しました。