ダメなやつほど、ダメじゃない/萩本欽一

 

 

 先日、80歳になられての著書『80歳、何かをあきらめ、何もあきらめない』を読んで興味をそそられたので、萩本欽一さんの自伝的な著書があると知って手に取ってみました。

 

 全盛期には手掛けられた3つの番組の視聴率の合計が100%を超えていることから、「視聴率100%男」との異名を取り、日本を代表するコメディアンとの評判を誇りながら、40歳代に入ってスパッと高視聴率のまま番組を降板されたのが印象的で興味をそそられるところです。

 

 これまでの著書でも再三萩本さん自身、子供のころから不器用であまりデキがよくなかったということをおっしゃられていますが、あんな成功者がそんなことないだろ!?と思いつつも、やはりこの本でも子供のころからおとなしくて不器用だったことを改めて告白されています。

 

 お父様が事業に失敗されてかなり苦労されたということで、早くおカネを稼いで両親にラクをさせてあげたいと思ってコメディアンを志して、当時芸人の修行の場として知られた浅草に行かれたのですが、そこでもなかなか要領を得なかったということですが、目の前のことを素直に愚直に積み上げられたことが芸人としての肥しとなり、坂上二郎さんとのコント55号でその蓄積が爆発したといった感じに思えます。

 

 その後、多くの大ヒット番組を手掛けられるのですが、浅草での人と人とのつながりをベースとした伝統的な笑いを、斬新なフォーマットと結び付けるワケですが、基本に伝統的なモノがあったからこそ多くの人に受け入れられるモノになったんだと思えます。

 

 絶頂期でスパッと番組を辞められたのも、どこか自分の置かれている境遇を客観的に見るクセみたいなもののなせるワザなのかな、という気もしますし、その後大学生になられて仏教を学ばれたこともあるように、どこか諦観みたいなものを持たれていたのかな、という気もします。

 

 ワタクシ自身、欽ちゃんの全盛期をリアルタイムで見てきたので懐かしく読みましたが、最近割とアクの強い笑いがハバを利かせているからこそ、欽ちゃんのほのぼのした笑いにどこか郷愁的なモノを感じてしまうのかも知れません。