漫才の教科書/元祖爆笑王

 

 

 『めちゃイケ』や『笑っていいとも!』など名だたる人気番組を手掛けられてきたプロデューサーの方による漫才指南です。

 

 以前、ナイツの塙さんがM-1グランプリについて語られた『言い訳』を読んだ時に、あまりに緻密な計算に基づいてネタを作られることに心底オドロいたのを覚えていますが、そういうトップレベルのコメディアンではなくても、漫才のネタというのはある程度ロジックに基づいて作るべきだということで、この本ではそういう方法論について紹介されています。

 

 多くの人がコメディアンというのは、研ぎ澄まされた感覚が重要だと思われている人が多いと思うのですが、それだけではなかなか勝負できないでしょうし、そういう感覚というか才能の上に、ロジックを積み上げる必要があるようです。

 

 2020年のM-1グランプリでチャンピオンになったマヂカルラブリーのボケ役である野田さんがほとんどコトバを発することなくカラダの動きだけでボケをするというカタチで、あれは漫才じゃない、という論争が巻き起こりましたが、漫才というのは定番であるロジックの積み重ねと、その破壊の繰り返しということで、それでもロジックを学んで、それに則ることががどういう効果をもたらすのかを認識したうえで破壊することがどういう効果をもたらすのかを考えることができるということで、逆説的ですがロジックの重要性がロジックを破壊する上でも重要だといいます。

 

 また漫才の中ではフリ~ボケ~ツッコミという一般的なプロセスがありますが、フリというのは必ずしも漫才そのものの中にだけあるのではなくて、そもそものキャラ設定から始まっており、売れているコメディアンの多くはそういうキャラ設定から実際の漫才に至るまでイメージが一貫しており、そういう意味でのブランディングが徹底してるようです。

 

 この本の中でも例として、オードリーの春日俊彰さんが胸を反らせてゆっくり歩いて登場するということを紹介されていて、そういう所作が漫才の時だけでなく、バラエティー番組などでも一貫していることを指摘されています。

 

 そういう風なフリが、ネタをする上で、本来ならば必要な説明を省くことにつながり、どうしても説明クサくなることによる興覚めな感じを避けることにもつながるということです。

 

 別に漫才師になりたい人じゃなくても、プレゼンをするビジネスパーソンにも参考にすべきところがあるじゃないかと思えるところがあって、読み物としてもなかなか面白いので、一読してもらいたいところです。