日本は没落する/榊原英資

 

 

 旧大蔵省(現財務省)で国際金融行政で長く辣腕を振るわれ「ミスター円」との異名を持つ榊原英資さんが退官後の2007年に執筆された警告の書の2011年文庫化に伴う加筆が加えられたバージョンです。

 

 10数年前に執筆された内容がベースになっているワケですが、日本は榊原さんの”警告”以上に暴走してしまい、この本で危惧されている行く末よりもかなりヒドイ状況に陥っているように思えます。

 

 榊原さんは小泉~第一次安倍政権の流れをポピュリズムの端緒となったと指摘しておられ、それ以降政治の世界で長期的な展望を持った取組というのが欠如してしまい、そのままの状態が続けば「没落」してしまうぞ、という警告を発せられているのですが、政治家だけでなく、官邸に人事権を握られた官僚たちまでもが政治家のご機嫌取りに汲々とする状況となって長期的な展望を失ってしまい、経済的な外交政策で中国だけでなく、台湾や韓国の後塵を拝するようになったのは、残念ながらまさに榊原さんがこの本で予言した通りになってしまっています。

 

 また、教育面においてこの本が出た頃は「ゆとり教育」の弊害が出始めた頃なのですが、その後大学入学に向けたプロセスもヌルさを増し、かつ教育関連に向ける予算は削減の一途をたどりった末、どんどんとトップレベルの教育水準が低下し、諸外国のエリートクラスに対抗できる人材がより少なくなってしまっています。

 

 榊原さんは「技術」「知識」「情報」がポスト産業資本主義時代に重要な意義を成すとおっしゃられていますが、これらを軽視してきた日本は、このあとその状況に気付いて立て直すことができるのでしょうか…