未来を変えるちょっとしたヒント/小野良太

 

 

 タイトルだけ見るとありがちな自己啓発書のようですし、講談社現代新書っぽくないなぁ、と思いながら手に取ってみたのですが、実はこの本「未来学」というあまり日本ではなじみのない学問分野のイントロダクション的な内容となっています。

 

 著者の方はアメリカの大学で「未来学」を研究されていて、いつかイントロダクション的な本を出版したいと思っておられたということで、その念願を果たされたのがこの本だということです。

 

 「未来学」というのは、未来に起こる出来事が発生するメカニズムみたいなモノを研究する学問分野だということで、それだけにフォーカスする学問分野が存在することに驚きますが、ある個人もしくは社会が持っている”常識”(用語としては"Order"を遣われています。)みたいなものと、将来に対して抱いている期待がどのように作用して、その結果としての未来が発生するかということについてロジカルに説明されていて、かなり興味をそそられます。

 

 社会が楽観的な空気に包まれるとそれなりに望ましい社会が結果として現れるようですし、逆に悲観的だと望んでいない社会が現れるということで、日本における高度経済成長期と「失われた30年」を引き比べると一定の妥当性があることは明白だと思えます。

 

 ということで、社会に希望が溢れる状況を作るというのは、望ましい未来を作る上でかなり重要だということが導かれていて、政治がそういう状況を作り出すことが重要であることは、経験則的に理解できるところではありますが、論理的にそういうことを証明することには一定の意義があるように思えます。

 

 この本が出版されたのが2010年なので、その後この分野が日本ではそれほど広まっていないようですが、もうちょっと盛り上がってもいいんじゃないのかな!?という気がして、少し残念ではあります…