タテ社会と現代日本/中根千枝

 

 

 この本、元は1967年に出版された『タテ社会の人間関係』という本で脈々と現在に至るまで読み続けられていたということなのですが、その本の内容を著者の中根さんと現代日本に照らしてみようといった企画の本です。

 

 モチロン多少はその色彩が薄れつつあるとはいえ、日本社会における「タテ」の関係というのは脈々と生き続けているということで、「先輩・後輩」の関係というある種特殊な序列がどのように機能しているのかについて考察されています。

 

 日本の親族や会社などの小集団における人間関係において、先にそこにいた人が尊重されて、後から来た人は先にいた人の下手につくという慣習があって、時には先にいた人が後から来た人にキツめの当たりをすることもあって、ヨメいびりやパワハラなど様々なカタチで今なお、「先輩」から「後輩」の圧迫が続けられているのは多くの日本人が見聞きするところでしょう。(インドなどでは、嫁に来た人は特別大事にされるようです…)

 

 なぜ日本ではそういう上下関係が形成されて「上」から「下」への圧迫が続くのかと言えば、諸外国と比べて最小単位となる「小集団」の規模が比較的小さいということもあって、凝集性が強くいわゆる「同調圧力」が働くことが多く、そういう「空気」を形成するのは元からいる人であることが多いからだということです。

 

 かなり日本の閉塞性についてシンプルかつ明快に提示されていて、この本の著者の中根さんは社会人類学者だということですが、社会学もこういう意義深い業績があるんだと認識させられた次第でした。