「戦前」の正体/辻田真佐憲

 

 

 明治維新から太平洋戦争の終戦に至るまでの時期に、神道が日本人の精神生活にどのような影響を及ぼしたのかについてを語られた本です。

 

 明治維新以降、特に日中戦争、米英との戦争に至る過程においては国家神道が大きな影響を及ぼしたといわれますが、あくまでもプロパガンダというか為政者がご都合主義的に唱えていたモノなんじゃないかという印象があったのですが、実はかなり庶民に至るまで国家神道に基づく考え方が精神世界に浸透していた様子を紹介されています。

 

 あくまでも明治維新直後に国家神道的な考え方を広めようとした際に、当時の権力者たちはあくまでも、それまで幕藩体制の中で国民としての意識の統一感がなかったところ、天皇家神道の主宰としての性格を強調して国家統合の拠り所としようとしたのは、この本ではネタと書かれていますが、あくまでも方便であって、のちの一種狂信的な思想として浸透することは想定していなかったでしょうし、破滅に至る素となるとも思っていなかったことでしょう。

 

 教育などを通じて国家神道が国民の生活の中に浸透していた様子を紹介されていますが、実は神道は古くから他民族に対する優越性を唱えていたようで、江戸時代の国学者神道家でもある平田篤胤が日本人の優越性ゆえの天皇家による世界支配を唱えていたことを指摘されていますが、脈々とその考え方が昭和初期の八紘一宇大東亜共栄圏につながっていたことにかなりショックを受けた次第で、今のロシアや北朝鮮よりももっと狂信的な状況にあったんだということなんだと思われます。

 

 こういうのを知るにつけ、よくぞGHQが天皇家の存続を認めたもんだなあ、と思うワケですが、いつかまたそういう狂信的な考え方が蔓延するのを防がないとヤバいなぁ、と再認識させられた次第です。