日本人の底力/菅原文太

 

 

 昭和の名優菅原文太さんは晩年有機農業や環境問題への取り組みなど社会的な課題についての発言を積極的にされていたことで知られますが、2003年からお亡くなりになる2014年まで続けられた『菅原文太 日本の底力』というラジオ番組で各界の論客と日本を取り巻く問題について語られていたということで、この本はそのベストセレクションともいうべきもので、対談相手には『昭和史』の半藤一利さん、『奇跡のリンゴ』の木村秋則さん、『里山資本主義』の藻谷浩介さん、そして”知の怪人”佐藤優さんなど豪華な顔ぶれとなっています。

 

 様々なジャンルの方と対談されているのですが、一貫して語られているのは今なお続く日本の閉塞感について、日本人としてのプライドの欠如や方向性をみうしなっっているんじゃないかというイラ立ちが感じられ、戦争からの復興~一定の経済成長を成し遂げた後、どういう方向に行くべきなのかを提示できない政治や、通弊にどっぷりと浸かって進化を止めてしまう多くの分野を語られます。

 

 特に熱く語られているのが、ご自身もかつての翁長沖縄県知事の応援演説にも入られたように、かなり関心が強いようで、”知の怪人”佐藤優さんと沖縄の置かれた状況について語られている際に、かつては米軍の駐留を認めたドイツやイタリア、フィリピンもすでに退去をさせており、日本にそれができないのはなぜなのか、と憤りをあらわにされているのが印象的です。

 

 お亡くなりになって10年近くが経ち、より閉塞感や政権の制度疲労が顕著となるなか、文太さんのようなアツい論客がいたら…と思えてなりません。