無宗教でも知っておきたい宗教のことば/島田裕巳

 

 

 島田先生ご自身は、日本人の多くの人が「無宗教」を自称しながら、かなり宗教的な行動をしていることを再三指摘しておられますが、「無宗教」を自称したとしても「常識」として知っておいた方がいい、宗教の関するコトバについて紹介された本です。

 

 確かにこの本で取り上げられているコトバの多くは、コトバそのものについては聞いたことがあるモノばかりで、中にはかなり身近なモノも少なからずあるのですが、それでも読んでみると、そういう意味があったのか!?と思わされるモノが少なくありませんでした。

 

 特に第3章で「使い方を間違えると危険なことば」として宗教的な用語を取り扱われていますが、「イスラム原理主義」というコトバに多くの日本人は過激な暴力的思想の持主と思うでしょうけど、あくまでも聖典であるクルアーンに忠実であろうとするということであって、あまり過激な行動で目立つだけに印象は強くなってしまいますが、多くの原理主義者はむしろ生真面目な人が多いようで、原理主義というのはキリスト教など他の宗教にもあるもので、いたずらに「イスラム原理主義」のみをやり玉に挙げるのは、どうしてもキリスト教国の影響を受けがちな日本にいるからなのかもしれません。

 

 また、第5章で「映画・アニメ・ゲーム・芸術・文学に出てくることば」を読むと、如何に人々の生活に宗教が根付いているかを改めて痛感させられますし、日本のアニメである『エヴアンゲリオン』が福音というコトバの元になったギリシャ語「ユーアンゲリオン」のラテン語読みから来ていると紹介されているのに驚かされます。

 

 あとがきに「ことばというものは、一方ではとても便利な道具だが、その一方では、使い方を誤るとひどく危険なものである。」と語られていますが、とくに宗教に関するコトバは、その人の信条の根幹をなすものである可能性もあり、通訳ガイドとして外国人と接する機会があるワタクシとしても、地雷を踏まないようにこういうことをしっかり押さえておくことの重要性を再認識させてくれるありがたい本でした。