「宗教」のギモン、ぶっちゃけてもいいですか?/島田裕巳

 

 

 宗教学者島田裕巳先生が、居酒屋で偶然隣り合わせた若いカップルの宗教に関する素朴なギモンについて語られるというカタチで、日本人の宗教にまつわる習慣について語られた本です。

 

 島田先生は著書の中で、日本人は「無宗教」を自称しながらかなり宗教的な行動をしていることを再三語られていて、かつ神道、仏教、キリスト教と様々な宗派に基づくイベントをこだわりなく受け入れているのが特徴だと言えますが、その融通無碍な姿勢というのが、元々日本の土着的な宗教であった神道が教義がいっさいなく、ただ森羅万象の様々なモノに神を感じて祈りを捧げるという姿勢に根差すモノだと指摘されているのが印象的です。

 

 葬式や厄払い、初詣などといった多くの日本人になじみ深いと思える一見宗教的なイベントが、実は厳密にいうと元々の宗教的な教義から見ると、まったく根拠がないモノであることが多いんだそうで、お盆で死者の魂が元の家に戻ってくると言われることについても、どちらかというと儒教的な思想に根差している部分が多いということで、同時期に開催される仏教としてのイベントである盂蘭盆会とは「盆」という名前を引きついていること以外あまり関係がないといったご指摘が興味深いところです。

 

 また、厄払いについても元々仏教的な根拠はないということで、現在多くの寺院で行われている厄払いも後付け的なところが多いというのはちょっとオドロキです。

 

 でも、無宗教を自称される人だったり、それすらも意識していない人だったり、仏教徒だったりする人が、結婚式場に併設されたチャペルでキリスト教的な結婚式を行うといった宗教的な寛容さが一面日本人の美質でもあるというのは大事にしたいところではありますが、多くの日本人がこういう本を読んでもうちょっと宗教に関心を寄せてもいいのかもしれません。