新宗教と政治と金/島田裕巳

 

 

 昨年の安倍元首相銃撃以降、新興宗教にキビシい目が向けられていますが、宗教学者島田裕巳が宗教と政治との関係を中心に、戦後の新興宗教について語られます。

 

 戦前は「国家神道」の影響で、信仰の自由には制限があり、宗教の布教には大きな制約があったワケですが、戦後GHQが「国家神道」が日本の軍国主義化の主要な要因の一つだとして、憲法にて信仰の自由を留保なしに認めたことによって、戦後数々の新興宗教が勃興したということのようです。

 

 そんな中で創価学会が政治との結びつきを強めて、勢力を大きく伸長させたこともあって、多くの宗教が政治への接近を図る様子が紹介されていて、実際に各政党も一定の宗教との結びつきがあるのは否定できないようですが、創価学会も学会本体と公明党も直接の関連は一旦断っているように、政策への直接の影響はそれほど見られないようです。

 

 もともと多くの日本人は新興宗教に対してアレルギーがあるということもあって、統一教会と政治との結びつきに過度に反応しているという側面があると指摘されていますが、島田さんは実際の影響力はそれほど大きくないとおっしゃいます。

 

 また、世界中の多くの国家で「政教分離」が取り入れられてはいるものの、宗教的な要素を厳格に排除している国はほとんどなく、習慣の範囲で政治的な場面でも宗教的な要素が見受けられることも指摘されています。

 

 モチロン、半ば強制的な寄付やマインドコントロールなどといったことは許されないことではあるのですが、多くの宗教はごく常識的な「宗教活動」をしていて、日本人の精神生活へ一定の貢献をしているという側面もあるようです。

 

 また、日本人がよく言う「無宗教」というのは、海外で言ってしまうと「自分は無政府主義者です。」と似た感じの危険分子扱いをされることがあるようですし、外国人から見て、寺社に参拝したりする行動は決して「無宗教」とはされず、特に無意識に宗教的な行動をしていることが多い日本人が、ムリに宗教を遠ざけることは困難でもあり、昨今の宗教に対するアレルギー的な反応は行き過ぎなんじゃないかというのが島田さんのご指摘です。

 

 カルト的な動きには警戒が必要ですが、昨今の魔女狩り的な反応にも確かに大いに問題があるところで、冷静な対応を心掛けたいというのは真っ当な指摘だと思えた次第でした。