「日本」論/佐藤優

 

「日本」論 東西の“革命児”から考える

「日本」論 東西の“革命児”から考える

 

 

 「知の怪人」佐藤優さんが、朝日カルチャーセンターで行った講義がベースになった本なので、『「日本」論』と銘打たれているのですが、正面から「日本」を語るという感じではなく、現代の日本が置かれている危機にどう立ち向かうか、ということで、ルターの著書である『キリスト者の自由』と日蓮の著書である『立正安国論』を題材にして語られたものです。

 以前、佐藤さんが創価大学での講義をまとめた本で、プロテスタント日蓮宗の類似について言及されていましたが、この本を読むとよりそのことが深く理解できます。

 カトリック浄土真宗が他力本願的なところがあるのに対し、プロテスタント日蓮宗では、あくまでも自律的に行動することによって、自らを救済するといった側面があって、そういう姿勢って多くの日本人にとって相性がいいと感じるのですが、プロテスタント日蓮宗もあまり日本ではメジャーとは言えないのが不思議な気がします。

 またこの本では、改めて宗教が政治に及ぼす影響について言及されているのですが、近代国家では政教分離が建前となっている国が多いのですが、昨今のトランプ大統領に見られるユダヤ教の影響の強さでもわかるように、人間の思考のベースに宗教があるように、どうしても政治家自身の行動に宗教の影がちらつくことは避けられないワケで、決して宗教の影響力を軽視すべきではないということです。

 日本人は割と宗教に対する偏見が強いように思えますが、だからと言って、避けて通れるワケではないということを、ちゃんと認識しておくべきなんだな、ということが痛感できる本です。