捨てられる銀行2 非産運用/橋本卓典

 

 

 先日紹介した『捨てられる銀行』が地銀が置かれた環境と金融庁の政策転換が興味深く、続編があると知って早速手に取ってみました。

 

 前回は、銀行の財政健全化から地域経済活性化の役割を担わせるという金融庁の政策転換についての内容が主要なテーマだったのですが、今回も2015年に就任された金融庁の森長官が個人投資の窓口としての銀行の改革への取り組みを紹介されています。

 

 1996年の金融ビッグバン以降、各金融機関がメインとなる商品の垣根を越えて様々な金融商品を取り扱えるようになり、銀行も顧客に対して投資信託などの金融商品の販売を始めたワケですが、どちらかというと目先の手数料収入を稼ごうとすることにヤッキになり、ややもすればサギ的な売りつけといったことも散見されたようですが、政府が個人の資産を貯蓄から投資に転換させる方針を受けて、金融庁が旗振り役になって投資の振興を図ることになったのをキッカケに、信託を受けたモノが果たすべき義務という意味の「フィデューシャリー・デューティー」という考えのもと、顧客の投資パートナーやアドバイザー的な役割を銀行に担ってもらうことにより、投資を広げていこうということのようです。

 

 森長官がそういう政策を取り入れるに至った理由として、アメリカとの投資残高の圧倒的な差というものがあり、アメリカの金融機関が投資者に対して果たしている役割を鑑みて、投資の支援の役割を果たすべき存在の必要性を痛感したから、ということがあるようです。

 

 その後、森長官の在任中にNISAの導入など一定の投資の振興に向けた施策の拡充はあったようですが、岸田政権でも投資の拡充策の腰折れがあったように、どうしても日本人の性癖に根差す部分もあるようで、また森長官のような剛腕の再来が必要なのか!?などとも思いますが、少子化が進む中、投資の振興はある程度喫緊の課題ということもあり、こういう啓蒙が何らかのカタチでさらに進むことが必要なのでは!?とも思います。

 

 なお、この『捨てられる銀行』は、あと2冊シリーズが残っているようなので、近いうちに紹介したいと思います。