捨てられる銀行/橋本卓典

 

 

 金融庁というと、2000年の発足以来不良債権処理を主要なミッションとして、銀行には畏れられる存在としてそれなりの成果を挙げてきたワケですが、チェックリストをベースにした締め付けの姿勢が逆に、特に地銀を中心とする銀行の成長の機会を奪ってきた結果、特に地方において経済的な停滞の一因となっていたということもあって、2015年に就任した森長官の下、中小企業の積極的な経営支援により地方経済の活性化を標榜するという方針転換をして以来の、金融庁及び地銀を中心とする銀行の対応について紹介された本です。

 

 不良債権の処理は、それなりにカタをつけなければ経営基盤がぜい弱な地銀などにとっては、生存がかかっていただけあって、優先的に取組むべき課題であったのは間違いなかったと思うのですが、15年余りの不良債権処理優先の取組の中で、銀行では「晴れの日に傘を差しだして、雨の日に傘を奪う」と揶揄されるように、貸しはがしなどの中小企業に対する苛烈な対応による財務基盤の維持を過度に施行する姿勢で、中小企業を中心とする地域経済が極端に停滞したことが、日本経済の停滞を招く一因となったということもあって、日本経済再生のために銀行に対して、中小企業への積極的な経営支援も含めた、企業再生引いては地域経済の活性化を志向するような、ある意味180度の方針転換を行ったのに対する銀行の対応の状況を紹介されています。

 

 この本の出版が2016年だったということもあって、それほど目覚ましい成果が出ているワケではなさそうなのですが、一部の先進的な取組を行う銀行の対応なども紹介されていて、活性化の萌芽が出つつあるような状況だったようで、そういう変化に対応できない銀行は「捨てられる」かも知れないという生存競争を強いられつつあるようです。

 

 この本はその後シリーズ化されているようなので、続刊も近いうちに手に取ってその後の状況を紹介したいと思いますので、乞うご期待!ということで…