マルクス/白井聡

 

 

 日本の長期低落傾向故か、資本主義の限界が取りざたされるようになって久しいですが、そんな中で”知の怪人”佐藤優さんが『いま生きる階級論』など『資本論』について語られた著書を立て続けに出版されたり、新進気鋭の哲学者である斎藤幸平さんの『人新世の「資本論」』が大きな話題をまくなど、資本主義の閉塞状況についての糸口を『資本論』を始めとするマルクスの理論に求める風潮が強いようです。

 

 この本は、『主権者のいない国』など、安倍政権への批判で知られる思想家の白井聡さんがマルクスの思想を語られるという本で、ああいう言説というのは、白井さんってソッチ系の人だったのね…とミョーにナットクした次第でした。

 

 この本によると、そもそも資本主義の閉塞感というのは今に始まったことではない、とマルクスは説いているということで、資本主義自体が内在的に「破壊」をしつつ拡大していくということで、これまでも労働者の搾取や環境の汚染などという「破壊」をまき散らしつつ「発展」してきたということで、昨今感じる閉塞感もそういう一連の「破壊」の一つだといえるかもしれず、先達が様々な「破壊」に伴う問題を取り繕ってきたように、何かどこか、昨今の閉塞感も払拭されるのかもしれません。

 

 ただ、斎藤幸平さんが『人新世の「資本論」』で触れられていた、資本主義の拡大に伴う地球環境の「破壊」ということについてもこの本の中で触れられていて、資源の枯渇や大気や水質の汚染など、確実に地球を壊しつつあるのですが、取り返しのつかないところまで「破壊」してしまったら、地球外に脱出するという解決策をひねり出すのでしょうか…