「若者の読書離れ」というウソ/飯田一史

 

 

 「最近の若い人はあまり本を読まない」と言われ続けて久しいと思うのですが、実は近年そういう状況が変わってきているということを、実際の調査を通してみてみた本だということです。

 

 1980~90年代位にかなり高校生以下の読書量が減ったということで、小中学校で朝の時間に読書の時間を設けるなどの努力もあって、2000年以降かなり回復してきたということと、以前は小中学生をターゲットにしたライトノベルがハバを利かせていたのが、かなり広いジャンルの本を読まれるようになっているということも紹介されています。

 

 そういう若い世代にササる本の「王道」みたいな傾向も見受けられるようで、

  1.正負両方に感情を揺さぶる

  2.思春期の自意識、反抗心、本音に訴える

  3.読む前から得られる感情がわかり、読みやすい

といった特徴を持つ本が受け入れられやすいようで、そういう特徴を兼ね備えた本であれば、あえてそういう世代をターゲットにした本だけでなく、東野圭吾など、フツーにオトナにも人気がある作家も手に取られているそうで、ちょっとびっくりしたのが水野敬也さんの『夢をかなえるゾウ』も広く手に取られているようで、一時期『夢をかなえるゾウ』にハマっていたウチの次女が変わっているワケではなかったようです。

 

 そういう本にたどり着く手段として、TikTokYouTubeなどのSNSがトリガーとなっていることも多い様で、そういうリーチの手段があれば、SNSや映画、テレビなどと並んで、彼らのエンタメの選択肢として成り立っているということに、ちょっとしたオドロキとともに、ホッとした気分や、ナットク感もあって、ムリに読書を押し付けようとしたオトナのあざとさが読書から彼らを遠ざけてきたのではないかとすら思えてきます。

 

 ただ、芥川賞のターゲットとなるような純文学は、例えば主人公が死んだりするようなあざとさを敬遠するようなところがあるようで、なかなか「王道」にハマる作品が少なく、彼らに受け入れられていないということらしいのが残念ではあります。

 

 でも、自然に自分にふさわしいエンタメをサーチする中で、ちゃんと本がターゲットとなっていることに彼らの感性の豊かさに嬉しさを感じさせられました!