社会学入門/筒井淳也、前田泰樹

 

 

 このブログを継続的に観てくださっている方々は、ワタクシが時折社会学関連の本を取り上げては懐疑的な目を向けていることを認識されているかもしれませんが、じゃあ、そもそも…ということで、大学のパンキョーの教科書的な本を手に取ってみました。

 

 この本は、社会学定量的に捉える計量経済学の専門家である筒井さんと、定性的に捉える理論社会学の前田さんの共著となっており、人間が生まれてから、学んで、働いて、家族を作って、病んで、死ぬまでの過程の社会学としての関りを、社会学における分析の手法を織り交ぜつつ紹介していくというカタチを取られています。

 

 そもそも社会学というのは、人間と社会との関りを扱うという学問なので、言っていれば世の中のありとあらゆるモノが対象となるワケですが、むしろどうやら分析の手法に社会学社会学たるところがあるのかもしれないと感じました。

 

 分析の手法として、対象となるある現象について、それがどのように起こっているのかをフィールドワークなどで観察し、それがどのような背景で起こっているのかということを統計的な手法や、社会的な背景などを出版物などで分析するようで、例えば高度経済成長期に専業主婦が増えたのは、戦後の産業化の進展につれて都市への人口流入の結果、核家族化が進み、一旦労働と家事の分担が進んだということが、家族社会学という分野において、定量的、定性的に分析されてきたことを紹介されています。

 

 社会学に関する多くの書籍というのは、研究の結果としてのモノなので、その背景としてどれくらいの定量的・定性的分析が行われているのがわからないモノが少なからずあって、自分が関わっているニッチな分野について、「〇〇の社会学」と銘打って、知っている範囲での社会的な背景をチラチラっと絡めて、ロクに仮説設定や検証といった科学的な分析を経たとは思えない「なんちゃって社会学」に思える本が跋扈しているのが、社会学の信頼を損なっている側面があり、ワタクシも懐疑的な目を向け続けていましたが、基本的に社会学自体にはしっかりとした学術的なバックグラウンドがあるんだということを、この本を読んで、ようやく改めて認識できた次第でした…