日本学の教科書/伴野文亮

 

 

 「日本学」というのにちょっと興味をそそられて手に取ってみたのですが、そもそも「日本学」というのは幕末ちょい前くらいからヨーロッパを中心に、日本がちょっとしたブームだったらしく、そこで興味をそそられた人々のうちアカデミックな素養のある人たちが研究対象として見始めたことがキッカケなんだそうで、日本にも訪れたシーボルトが黎明期の研究に多大な貢献をしたようです。

 

 その後、開国~明治維新を経て、日本からの情報も多くなっていったのですが、日本美術の危機を救ったフェノロサや、最晩年にはとうとう日本人になられたドナルド・キーンさんなど多くの優秀な研究者を得て、今なお欧米ではそれなりのステータスのある学問なんだそうです。

 

 最近は日本の大学でも「日本学」を研究するところが増えてきているようで、この本はそういった機関の研究者たちが、日本における「日本学」の状況を紹介したモノとなっています。

 

 元々はヨーロッパ発祥のモノを逆輸入したカタチになるので、ちょっとミョーなところはあるのですが、おおよそ日本におけるあらゆるものが「日本学」の対象とはなるモノの、多くのモノはすでに何か別の学問の研究対象となっていることが多く、日本で研究する場合、「日本学」として研究する意義というか、独自性が求められるようで、却って難しいところはあるようです。

 

 このブログでは、再三社会学の存在意義について懐疑的な見方を呈していますが、似たような状況があるようで、結局他人の土俵で…みたいな見方をされる部分もあるようです。

 

 ただ、例えば日本の仏像を見た場合に、宗教学だったり、日本史学だったり、美術史といった学問分野の研究対象となるワケですが、それを「日本学」として見た場合に、それらの学問のトランス的な位置づけも可能なワケで、そういう横串を指すような研究には一定の意義があるような気がしますし、そんな中で海外の人から見た目、というのは日本での個別の研究分野に新たな視点を与えてくれるという意義があるのかもしれません。

 

 ということで、なかなか「日本学」自体の興味深さを感じるとともに、社会学の存在意義をそれとなく感じるという、思わぬ副産物もあったということで、ちょっとトクをしたような気がしました。(笑)