先日、手嶋さんの佐藤優さんとの初期のインテリジェンスに関する対談本三部作『動乱のインテリジェンス』『 『知の武装』『賢者の戦略』をイッキに紹介しましたが、その中で有数のインテリジェンス・オフィサーであった”知の怪人”佐藤優さんが再三激賞していた日本初のインテリジェンス小説である本作が気になって手に取ってみました。
文庫本で手に取ってみたのですが、ちゃんと解説は”知の怪人”佐藤優さんでした!(笑)
一応この本は純然たるフィクションである小説の体裁をとっているのですが、北朝鮮が制作したとされる、精巧な偽札チェッカーでもすり抜けるという偽100ドル札である「ウルトラ・ダラー」をめぐって、その行方を追うBBCの記者のインテリジェンス活動を辿るカタチとなっています。
解説で佐藤さんは、こういった近未来に起こっても不思議ではないリアルなインテリジェンスを盛り込んだ小説を書くには、
・秘密情報が入ってくること
・新聞、雑誌、テレビなど膨大な量になる公開情報から情勢分析のための
断片情報を精査できるインテリジェンス能力をもっていること
・さらにその断片情報を分析して、実際には何が起こっているかを描くこと
ができる分析能力をもつこと
・自らが描いた得ずについて、確認を求めることができる友人を政界と官界
にもっていること
が必要で、手嶋さんはそういう条件を満たしているということですが、だったらなおさらこの「小説」にかかれていることのどこまでがリアルで、どこまでが脚色なのかに興味がわきますが、そんなことはおそらく手嶋さんが墓場まで持っていかれることなんでしょう…
北朝鮮の偽札づくりは公然の秘密でしたし、ウクライナの武器輸出も実際にあったことのようですし、また手嶋さん自身の趣味である競馬なども偽札の情勢と関連するアイルランドと絡めて出しているところも精巧ですし、単にストーリーテリングの巧みさを愉しむだけでも興奮できますが、国際情勢の知識レベルによって愉しめるレベルが変わるんだろうなぁ、と思うとちょっと悔しい気もしました…続編にあたる『スギハラ・ダラー』も近いうちに手に取ってみようと思います。