教養としての将棋/梅原猛、羽生善治、尾本恵市

 

 

 藤井聡太さんの快進撃もあって空前の将棋ブームではありますが、なかなか将棋の形勢を把握するまでの棋力を持つ人も少ないようで、勝負メシの詮索でお茶を濁すしかないのが大多数なのかもしれませんが、歴史のあるゲームであり、様々な魅力を兼ね備えているということで、一定の棋力がない人でも愉しめる観点を紹介した本です。

 

 日本の将棋と類似したゲームはチェスをはじめ世界中にあるワケですが、日本の将棋だけが取った駒を取った側が使うことができたり、駒が成ったりというルールがあることから、将棋に似た海外のゲームが引き分けになることも多かったり、駒が少なくなって形勢がわかりやすかったりするようなのですが、将棋はそのルールの特性上、終盤の大逆転みたいなことも少なくないようで、類似のゲームに比べてかなりエキサイティングなモノなんだということです。

 

 将棋の歴史や駒の芸術性など様々に将棋の愉しみ方を紹介されているのですが、やはり一番印象的だったのは、投了後にお互い対局を振り返る感想戦という伝統についての紹介で、まあ、色々とその後の対局への戦略もあるでしょうから、100%ホンネで語るワケではないでしょうけど、棋士が自分のコトバで終わった対局を語り合うというのは、ファンにとっても、あの局面でそんな事を考えていたのかということがわかるというのはワクワクするであろうことで、意義深いことだと思われます。

 

 この本で書かれていることではありませんが、藤井さんは感想戦であまりにもあからさまに色々と語りすぎて、今後の対局で不利になるじゃないかということで師匠にたしなめられたことがあるというそうで、それでもこともなげに勝ち続けることに却って凄みを感じするエピソードだったりもして、より将棋に興味をそそる要素になるじゃないかと思います。

 

 ちょっとこの本をキッカケにもうちょっと立ち入って将棋を見てみたいと思わせてくれるモノでした。