最高の生き方/ムーギー・キム

 

 

 『一流の育て方』『最強の人生相談』と、お母様のミセス・パンプキンとのタッグで、親しみやすい軽妙な語り口ながらも説得力のある深淵な世界でうならされたムーギー・キムさんですが、今回は単独の著作を手に取ってみました。

 

 『ブルシット・ジョブの謎』がひところ話題になったように、昨今、はた目からは大成功を収めているように見えるエリート・ビジネスパーソンが、実は自分のやっている仕事は社会的に役に立ってなくて、存在する意味がないんじゃないかという劣等感にさいなまれている人が少なからず居られるということをこの本でも指摘されています。

 

 そういう人たちの多くは、自身の「仕事の意義」を周囲からの「承認」に求めていることが多いことを指摘されていて、そういう承認欲求をこじらせた人々の生態をマウンテンゴリラならぬ、周囲へのマウンティングにいそしむ「マウンティング・ゴリラ」や「他人の手柄は自分の手柄」にしてしまうプテラノドンならぬ「テガラノドン」といった感じで、オフィス動物園の様子を紹介されています。

 

 そんな中で、よく言われるマズローの五段階欲求で最高次の欲求とされる「自己実現の欲求」も、それだけでは測れなくなっていることを指摘されていて、周囲からの承認を自己実現の尺度に用いていては、いつまで経っても充足感は得られないんじゃないかということで、自分の中にそういう充足感のモノサシを持たないと「自己実現の欲求」は充足されないようです。

 

 ということで、おっしゃることには100%同意なのですが、「オフィス動物園」の描写など、最初は読んでいて面白いと思ったのですが、やたらと長々と披瀝されているのには食傷気味でムーギー・キムさんのサービス精神が逆に作用している気がしますし、もっと「自分の軸」を持つことに注力してくれた方が充実した本になったとも思いますし、こういうことなら400ページ近い大著にする意味はあったのか!?というギモンもわきます。

 

 ムーギー・キムさんの著書の切れ味は、実はミセス・パンプキンあってのことだったのか!?