日本人の承認欲求/太田肇

 

 

 コロナ禍も「喉元過ぎれば…」ではありませんが、第7波では感染者数の記録を更新しつつも「行動制限のない夏休み」を強行したように、テレワークも一部のITを除けば随分と退潮したようにも見えますが、このテレワークが日本人の承認欲求に大きな影響を及ぼしたのではないかという興味深いトピックの本だったので手に取ってみました。

 

 コロナ禍の初期にテレワークを導入した企業において、当初は嬉々としてテレワークを受け入れていた社員たちですが、一部の企業では継続的にテレワークを制度として取り入れていたモノの、経営側だけじゃなくて社員の方も出勤を求めるようになってきたということなのですが、その原因の一つがテレワークでは「承認欲求」がじゅうぶんにみたされないという側面があることを指摘されています。

 

 日本人のビジネスパーソン、特に大企業に勤務していて、それなりのポジションにある人は、それなりに周囲が尊重してくれるということで承認欲求を満たしている部分があり、そういう「承認欲求」の充足を「見せびらかし」型とおっしゃっておられるのですが、そういう社会が認知してくれる「タイトル」みたいなモノを「どうだぁ!」とばかりに誇示するのが主要な商人欲求の充足であり、一番それを感じることができるのが会社だと、会社に行かないことはある意味で自己否定的なことになりかねないんじゃないかということかもしれません。

 

 ただ、そういうカタチで承認欲求を充足させてきた人たちも、テレワークの長期化によって、別のカタチを模索し始めていると指摘されていて、その方向性が会社の外部に向かっているということです。

 

 そのことによって、内向きな日本のビジネスパーソンの志向が外側に向かいつつあるという、ある意味革命的な変化をもたらしたと言えるようで、こういったムーブメントを日本社会としても大事にすべきなんじゃないかと、個人的には感じます。

 

 ワタクシなどは別に会社でエラくなっているワケでもないので、嬉々として通勤もしなくていい、時間の自由も効きやすいテレワークを受け入れていますが、テレワーク以前ではあるモノの、会社でそれほど「承認欲求」を満たされないと理解した時点で、こんなブログを書いたり、著書を出版したりと「承認欲求」の充足を外部に求めた経験があり、この本で著者の太田さんがおっしゃっていることに、ある程度の実感を持ってナットクできますし、できるだけ多くの人がこの本で指摘されているような外向きの志向を持ってもらえると、オープンな社会ができていいなぁ、と思います。