ノーベル平和賞で世の中がわかる/池上彰

 

 

 昨日、池上さんが10代に向けた反戦のメッセージともいえる『池上彰の君と考える戦争のない未来』を紹介しましたが、この本もある意味そういうメッセージがあるのかも知れません。

 

 ノーベル平和賞は元々ノーベル賞を創設したアルフレッド・ノーベルが遺言でその創設を切望したと言われる部門で、平和に資する活動をした人への授賞を意図したモノで、創設当初は第一回の受賞者である赤十字創始者アンリ・デュナンを始めとして、平和活動に従事した人に授けられていたのですが、その後の授賞者の変遷を見ると「平和」に資するための考え方の推移が伺えるということで、この本の企画につながったのではないかと思われます。

 

 この本は2012年に出版されたのですが、その時点からノーベル平和賞創設当初にさかのぼるような構成になっていて、その流れを辿るようなカタチになっています。

 

 当初平和活動の従事者に授けられていた賞が、戦争の終結のキッカケを作った政治家に授けられたり、国際連盟を提唱したウィルソンなど、平和に資する大きな枠組みを作るキッカケとなった人が受賞したり、平和を回復もしくは維持するための活動に従事した国際機関が受賞したりと、やはり戦争の抑止もしくは停止に資する活動を評価する傾向が強かったのですが、時代が下るにしたがって、そもそも戦争を誘発する遠因となる貧困を軽減するための活動や、人権の維持に資する活動への受賞が目立つようになるのは、ある意味進化と言えるのかも知れません。

 

 ただ、ノーベル平和賞はかなり政治的な意図に基づく授賞への批判もあり、必ずしも不撓不偏なモノとはいい難いところはありますが、それでも平和や人権の促進という意味で果たしてきた役割は決して無視できるものではなく、今後とも平和や人権の確保に向けてトガッた授賞を続けて行ってもらいたいモノだと思います。