以前『1998年の宇多田ヒカル』を紹介した音楽ライターの宇野維正さんが、オザケンこと小沢健二さんの全盛期の隠遁からの復活を辿られた著書です。
小沢健二さんはフリッパーズ・ギターでの1989年のデビュー時から「渋谷系」と呼ばれるヒップな音楽ムーブメントをけん引する存在であり、当初のカルト的な人気から、1994年リリースのアルバム『LIFE』で社会現象とも言える人気を博しますが、全盛期とも言える1998年に表舞台から姿を消されてしまいます。
この本は、ニューヨーク移住による隠遁から再び表舞台に返り咲くまでの日々を追われているのですが、あれだけの人気を博していたにも関わらず、本人があまり自身について語られないこともあって、かなりネタ集めには苦労された跡が伺えます。
元々カルト的な人気からブレイクしただけに、1995、1996年に紅白歌合戦に出場するといった国民的な人気を博した辺りで、分裂的なモノを感じていたように伺われ、そういうことをかなぐり捨てるためにセミリタイアをせざるを得なかったのかも知れません。
その後、2010年のツアーなどをキッカケに徐々に活動を再開されるのですが、かなりマイペースでマニアックな活動をされていることに、著者である宇野さんは我が意を得たりといった感じなのですが、だからといって大ブレイクを果たした『LIFE』も一聴するとキャッチーであるのですが、隠された毒といったモノがあって、そういう流れをその後の活動においても脈々と繋げているとおっしゃられています。
この本は2017年に出版されたので、その辺りまでの記載で終わるのですが、その後2019年にはフルアルバムをリリースされてツアーを再開というところでコロナ禍に見舞われて、2022年までの延期を余儀なくされ、個人的には確保していた東京でのチケットを、単身赴任の解除に伴いキャンセルせざるを得なくなったのが忸怩たるところです…
今後とも、マイペースでトガッた音楽をリリースし続けていって欲しいモノです。