ムハマド・ユヌス自伝/ムハマド・ユヌス&アラン・ジョリ

 

 

 マイクロ・ファイナンスという最貧層の女性への少額の融資をメインの業務とするグラミン銀行を創設し、バングラデシュを始めとする途上国の最貧層が貧困から抜け出すための支援を行い、2006年ノーベル平和賞を受賞されたユヌス博士の自伝です。

 

 以前もこのブログで、ユヌス博士が提唱するマイクロ・ファイナンス、ソーシャル・ビジネスの概念を紹介された『貧困の無い世界を創る』『ソーシャル・ビジネス革命』を取り上げましたが、この本は自伝ということなので、ユヌス博士がグラミン銀行を創設し、紆余曲折を経ながら成果をあげていく過程が描かれています。

 

 ユヌス博士はアメリカ留学中に祖国バングラデシュの独立を経験されるワケですが、祖国の自立を支援しようと、帰国されて大学で教鞭を取られるのですが、飢饉の後、自身の経済理論が人々を貧困から救うことに何の役にも立たないことにショックを受けられます。

 

 そんな中、搾取されている農村の女性と出会い、少額の資金を貸したことからグラミン銀行のマイクロ・ファイナンスの考え方が始まったということです。

 

 バングラデシュ、特にユヌス博士の出身地ではイスラム教徒が多いこともあって、女性の社会的地位が著しく低かったということもあり、その社会的地位を向上させることが貧困からの脱出並びに祖国の発展につながると考えられたようです。

 

 敢えて女性に、しかも融資というカタチを取られたのかということなのですが、自身がちゃんと事業を回して融資を返済するという仕組みに参加ことで、貧困層の女性たちの自尊心が生まれ、周囲にも「自分たちもできる」と思わせることで、より自立の輪を広げて行こうという意図があったようです。

 

 ユヌス博士の取組は、バングラデシュ、ひいては途上国にとどまらず、アメリカやヨーロッパの先進国にも広がっているということですが、地域や環境に関わらず、少しでも経済的な底上げを実現し、「貧困なき世界」が望まれます。