縮小ニッポンの再興戦略/加谷珪一

 

 

 『貧乏国ニッポン』など日本の没落を自覚した上で、その再興の方向性を探ることを啓蒙する著作で知られ、最近テレビのワイドショーにもコメンテーターとしてもお見掛けすることが増えてきた経済評論家の加谷さんによる日本再興の方法論を紹介した本です。

 

 安倍政権によるアベノミクスが結局は”失敗”だったんじゃないか!?ということが取りざたされますが、加谷さんによるとそもそも経済政策が経済再生の主要な要因となったことはこれまでもなかったということを指摘した上で、経済政策というのはあくまでも経済振興の側面支援にしかなりえないんだということを指摘されています。

 

 もともと、日本が戦後の高度経済成長を成しえたのは、朝鮮戦争の特需という降って湧いたような再生のキッカケを得られたのと、本来アジアでライバルとなるはずだった中国の文革などによる停滞があったというダブルの天祐による部分が大きかったということで、池田内閣の「所得倍増計画」も実は経済政策的には何もしなかった、ということになるようです。

 

 そういうことで1990年代までは”なんとなく”成功してしまっていたのが、過去のあまり実体のない製造業中心の輸出主導経済の成功体験に拘泥してしまい、なんでもかんでもハード的に解決してしまおうとするあまりIT導入によるイノベーションに乗り遅れてしまい、実体経済が消費主導経済に切り替わりつつあるのにも関わらず、経済構造が輸出主導経済の体制のまま転換できなかったことも相まって、「失われた〇十年」となってしまったのが実態のようです。

 

 それで、今後どうするか!?ということなのですが、米中対立~コロナ禍~ロシアのウクライナ侵攻などを経て、いったんグローバル化した世界経済の米国中心、EU中心、中国中心の3極ブロック化が進みつつあり、輸出主導経済を継続しようと思ったら中国のブロックに入らざるを得ないのですが、現状では現実的ではなく、結局は消費主導経済の実態に合わせて経済構造も転換していくしかない、ということで、IT投資の積極的な拡大などによって長らく最大の経済成長の阻害要因となっている消費マインドの改善を図るしかないということです。

 

 と、ここまでがこの本の内容なのですが、先日紹介した『未来の年表 業界大変化』でもあった通り人口の減少は止めようのない現実であり、多少消費マインドの改善を図ったからと言って、焼け石に水なんじゃないかと暗いキモチにさせられた次第でした…