国民の底意地の悪さが、日本経済低迷の元凶/加谷珪一

 

 

 先日『貧乏国ニッポン』を紹介した加谷珪一さんが、日本経済低迷の原因を語られた本です。

 

 コロナ禍の"自粛警察”でパチンコ店や居酒屋がヤリ玉に上がったことで知られるように、日本の同調圧力には凄まじいモノがありますが、実はそういう日本人の「底意地の悪さ」が日本経済の足を引っ張っている一因なんじゃないかということを語られています。

 

 モチロンそれだけが原因ではなくて、昨今の低迷の起因というのはバブル崩壊前後の製造業がリードする輸出主導経済から消費主導経済への移行という世界的なトレンドに対応できなかったことと、IT化の進展に伴うビジネスモデルの移行をスムーズにできなかったことだということですが、実は後者には日本人の閉鎖性という要素も深く関連しているようです。

 

 当然ITのメリットを活かすためには、ビジネスプロセスを大きく見なおす必要があるのですが、日本企業の多くは既存のプロセスに固執した結果、ビジネスプロセスの見直しを推進した諸外国に大きく後れを取ってしまったということです。

 

 その一例として、ワークフローの承認の印影を下層の職員の印影ほど右に傾けるようにする機能を多くの企業が求めたということで、プレーンに考えれば全然生産性に寄与しない機能に多額の開発費を支出する選択を多くの企業がとったことに改めて驚きます。

 

 ワタクシ自身もSEとして要求定義をしているときに、何度もそういう旧来のプロセスに固執する顧客を見てきましたが、今なおそういう傾向が続いていることに驚きます。

 

 ただ、消費を喚起できればそれなりに日本全体としては経済が持ち直すはずなのですが、そこでも日本の同調圧力の強さが消費の向上を阻んでいるということで、かなり状況は深刻です。

 

 その根源的な原因として、日本は未だ前近代的ムラ社会が続いているということで、プレーンな利益よりも周囲の”目”の方を重視してしまうところに病巣があるようです。

 

 最終章で、

  1.データと科学を重視するリアリズム

  2.個人と企業の自由を保障

  3.根源的な理念や価値観の共有

を浸透させれば、日本人本来の謙虚さを取り戻して、経済を再生させることができる、とおっしゃっていますが、なかなか実現は難しそうに思えます…

 

 前作同様、基本的な経済学のトピックも織り交ぜながら、シンプルな論旨で語られているので、非常に理解しやすく、経済の知識もつけながら、日本経済の本質的な問題点を理解できるという好著ですので、是非手に取ってみて下さい!