日本病/永濱利廣

 

 

 第一生命の主席エコノミストを務められている方が、ここ数十年の日本の不況について語られます。

 

 1990年代初頭のバブル崩壊以降、最早「失われた30年」となって、ひょっとしたらあと10年?20年?といった状況でまだまだ先が見えない状態となっていますが、30年間の停滞について、第二次世界大戦後のイギリスの長期にわたる経済停滞を指す「英国病」になぞらえて、「日本病」と呼ぶ向きもあるようで、ああはなりたくない、ということで日本の「失われた30年」が反面教師となって、世界のエコノミストの研究対象となってしまっているようです。

 

 「日本病」の顕著な特徴として「低所得」「低物価」「低金利」「低成長」の「4低」であることを指摘されていて、”黒田バズーカ”ということで日銀による「異次元の金融緩和」政策にて、ゼロどころか金利をマイナスにしても全く経済が拡大しない、絵にかいたように教科書通りの「流動性の罠」が発生してしまっていて、何の効果ももたらさない状況となっています。

 

 しかも、4月のロシアによるウクライナ侵攻以降、物価の状況が急速に進みつつあるのですが、政府・日銀が狙っていた景気拡大による「良いインフレ」ではなく、コスト上昇による「悪いインフレ」となっていて、不況下の物価上昇であるスタグフレーションという現象が顕著になりつつあり、さらには生活必需品の物価上昇で中低所得層を直撃する「スクリューフレーション」という状況になりつつあるようです。

 

 その原因として永濱さんは、過剰貯蓄を原因とする中立金利の低迷にあるということで、特に企業の内部留保が過多となっていることを問題視されていて、政府でも内部留保への課税などの施策を検討されているのですが、それよりも積極的な投資を促すような政策を推奨されています。

 

 また、積極的な財政政策の出動が処方箋となることを指摘されていて、巨大な財政赤字の中、どこまで有効な手を打てるのかが不透明ですが、来年の黒田日銀総裁の任期満了に伴う退場が浮上のキッカケになればいいんですけどねぇ…