日本銀行 我が国に迫る危機/河村小百合

 

 

 歴代最長となる10年の任期を終えて今年4月に退任した日銀の黒田前総裁の政策についての論評です。

 

 任期末期には事実上の利上げとも取れる施策を取りながら、頑として緩和のスタンスを崩さなかった黒田氏ですが、それには利上げに転換できない事情があった指摘されています。

 

 マイナス金利を取り入れてまで長期金利を最低の水準に固定してきたにも関わらず、任期中、目標としてきた2%のインフレターゲットにはかすりもしなかった挙句、散々国債を買い増した結果、これ以上は追加の引き受けができないところまで来てしまって、このまま利上げをしてしまうと、限界まで買い増した国債の利率負担に耐え切れなくなり、日銀の破綻が現実的な危機となってしまっているということで、後任の植田総裁も口が裂けても利上げなんてことをクチに出せない状況となっているようです。

 

 元々、一定の期間受入れをしていれば、そのうち日本経済が好転して買戻しをしてもらえるだろうという甘い見通しの下、ロクに出口戦略もたてぬまま、ズルズルと誰が止めることもなく買い増しが続いたところなど、二百三高地とか、太平洋戦争といった失敗を思い起こすような、だれも責任を取りたがらない日本の宿痾をいかんなく発揮しているように見えます。

 

 ただ、このままコストプッシュインフレが継続して、その状態を放置すればハイパーインフレの引き金ともなりかねない状況となっており、日銀が破綻するか、ハイパーインフレで財政が破綻するか、どっちに転んでも悲惨な状況が想定されるということです。

 

 ということで財政再建が喫緊の課題だということなのですが、少子化対策や防衛費倍増など財政支出を増やすようなことしか聞こえてきませんし、歳入にしても、政府自民党は票田である高齢富裕層に嫌われるような素材政策をとる気はサラサラ無い様で、結局はハードランディングをしてからじゃないとコトの深刻さを痛感することはないのかもしれません…