全国民が読んだら歴史が変わる奇跡の経済教室【戦略編】/中野剛志

 

 

 先日、現役の経産官僚でありながら日本の財政・金融政策に批判的な中野剛志さんの著書『 目からウロコが落ちる奇跡の経済教室【基礎知識編】』を読んで、色んな意味で感嘆したのですが、その続編も物議を醸しそうな内容で、タイトル通り「全国民が読ん」で、ちゃんと内容を理解したら、ヘタしたら暴動モノとも思える過激に思えるモノです。

 

 【基礎知識編】で、基本的には財政均衡にはあまり意味がなくて、貨幣発行権を持つ国家においては、敗戦などの余程の事情がなければ財政破綻することはありえず、ここ数十年の日本のデフレの状況を鑑みれば、財政均衡などむしろ害悪で、積極的な財政出動で早急にデフレ脱却を図るべきだったところを『ザイム真理教』の圧力に屈して、デフレ下にも関わらず消費増税などをやってしまったもんで、先進諸国から実質賃金という意味で、遥かに後塵を拝するという体たらくになってしまったということを恐るべきシンプルな論旨で語られていたのが印象的でした。

 

 【戦略編】では、その財政・金融政策を遂行する思想的な背景について紹介されているのですが、そもそも財政・金融政策というのは政治思想の反映であって、特に小泉政権以降の新自由主義的な思想が、労働者を搾取することで利益を上げようとする企業の姿勢を是認する「ムチ型」の政策を実行したことで、デフレの長期化や実質賃金の低迷を招いてしまったということです。

 

 片や欧米ではそういった失敗を鑑みて、労働者の賃金の上昇とその情報分を賄うための絶え間ないイノベーションを促すといった「アメ型」の姿勢を促す経済政策を実施したことで、好循環を生み出し、日本との実質珍言の差を広げていく結果となったようです。

 

 許しがたいのは、アメリカを始めとする西欧が「ムチ型」の経済政策を失敗した実例があるにもかかわらず、それに学ぶことなく同じ轍を踏んで、しかも二百三高地的に、その失敗の検証もせずに、死屍累々の犠牲を積み上げて反省のカケラもないところです。

 

 さらには、そんな中でも「ザイム真理教」が財政均衡をやろうとするということで、消費増税をし、「ムチ型」で企業には内部留保が詰みあがっていながらも、さらに法人減税をしようとする政権が崩壊しないのがフシギなくらいです。

 

 ということで、「増税メガネ」や「ザイム真理教」に好き勝手させないためにも、ホントに全国民にこの本を熟読して欲しいモノです…