シン・養生論/五木寛之

 

 

 リタイア世代に向けた著書も多い作家の五木寛之ですが、この本は日刊ゲンダイに寄稿されている連載「流されゆく日々」の中で、リタイア世代に向けたモノを集められたモノのようです。

 

 五木さんご自身早くにご両親を亡くされたようなのですが、子どもの頃から腺病質だと言われ、あまりカラダが強くなかった上、孤独の身となったことでご自身のカラダのケアに人一倍気を遣われてきたということもあって、昨今、メディアで取りざたされる健康に関するトピックに飛びつく風潮を疑問視されているようです。

 

 というのも、当たり前のことですが、自分のカラダへの適性というモノはどんな健康法にもあるモノで、ヘタをすれば誰かへの健康法が他の人への毒になることも十分ありえることで、ちゃんと適性を考えた上で取り入れなければ、誰かれなく取りざたされる「健康法」に飛びつくのは、危険極まりないというのはちょっと考えればわかるはずじゃないか!?ということのようです。

 

 後半では、これまでの著書でも再三語られてきた「死生観」を発展させて、リタイアしてからでも長らく生きていくことになってきていることから、「老生観」という概念を提唱されて、老いてからの生を如何に充実させるかということについて語られていて、インドの「四住期」という概念の中の「遊行期」という人生の最後の場所を求め、遊ぶように何者にも囚われない人生の最終盤を生きるという時期の在り方を紹介されていて、「遊び」と人生をシンクロさせることで、より生を充実したモノにするとおっしゃられているところについては、そうありたいと思わされます。

 

 一つこの本の中で書かれていることで気になるのは、昨今の世界を取り巻く状況というのは、戦前に似ているとおっしゃられていて、そういう世代の人が、同じようなことをおっしゃられているのをどこかで聞いたような気がするのが気がかりで、やはりかなりキナ臭くなってきているのかな…と不安を感じる向きも少なくないような気がします…