真説・企業論/中野剛志

 

 

 最近、ちょっとハマりつつある中野剛志さんの著書ですが、今回のテーマはベンチャーです。

 

 日本では長らく開業率が低迷しており、起業を活性化させるためにアメリカのシリコンバレーのような状況を志向して、振興策をそちらに寄せていっているワケですが、ホントにそれでいいのか!?というのが、この本の趣旨です。

 

 というのも、アメリカにおける起業の現状が、かなり短期志向的になってきており、数年で結果が出ないと廃業させるという、スクラップビルド的な状況になっているようで、そもそもの目的であるはずのイノベーションの喚起とは程遠い状態となっているようです。

 

 むしろイノベーションには、長期的な暗黙知の蓄積といった要素も重要で、そういう意味で日本企業のかつての長期雇用環境がそういった意味ではイノベーションを生み出す土壌となっていた側面があるようで、アメリカ的に短期業績を追い求めて、日本的な経営を捨ててしまう風潮を嘆かれているのが印象的です。

 

 『全国民が読んだら歴史が変わる奇跡の経済教室【戦略編】』でも触れられていましたが、短期的な業績を重視すると、どうしても「ムチ型」の経営スタイルで、コストカットなどの手っ取り早い手段での「成果」を求めてしまいがちですが、それをするということは長期的な成長と引き換えとなってしまうことが多いということで、日本企業がアメリカ的な経営スタイルをマネ続けたことが、昨今の成長の鈍化につながっているという側面を指摘されています。

 

 それなのにアメリカ経済が軽重を続けていて、日本経済が長期低迷しているのがフシギなところではあるのですが、日本経済は企業の経営スタイルという意味でも出口のないトンネルに入っている感を改めて突き付けられているような気がします…