韓国のグローバル人材育成力/岩渕秀樹

 

 

 文部科学省の官僚で、在韓日本大使館の初代科学技術担当書記官として韓国に駐在された方が、韓国の人材育成について紹介された本です。

 

 この本が出版されたのが2013年で、日本が長期低迷に喘ぐ中、サムソンを中心とした企業が破竹の勢いで快進撃を続けていた頃で、その人材育成の秘訣に注目されて、韓国駐在中にサムソンの幹部など幅広くヒアリングされた内容を盛り込まれています。

 

 その人材育成の在り方で、印象的なのが、国家を挙げてかなり戦略的に育成すべき人物像を明確にされていることで、科学技術系の要員の育成にフォーカスされていて、結果として、サムソンを中心とした半導体スマホといった情報機器の生産における躍進につなげるという大きな成果をもたらしていることが印象的です。

 

 日本ではどうしても反韓的な観点からモノを見たがる人が少なからずおられるので、あまりに専門的な人材育成にフォーカスしすぎたことに起因する、メディアでも求人のアンマッチに基づく失業率の上昇に着目したがる向きが多いようですが、少なくとも国家として一定の戦略を以って人材育成に取り組んでいるところは、教育に向けた予算を削り続けるどこかの国とは大違いで、ちょっとぐらい爪のアカを煎じて飲んで欲しい気がします。