新・金融政策入門/湯本雅士

 

 

 日銀OBの方が語られる「金融政策」です。

 

 元々、2013年に『金融政策入門』という大学の講義の教科書的な著書を出版されていたようですが、その後、アベノミクスの黒田バズーカにおいて、それまでの日銀の政策の常識をことごとく覆すような政策が連発されたということで、それまで補足的にしか触れられなかった、量的緩和イールドカーブコントロールといった政策手段が、主要なモノとして取り入れられるようになったということで、改訂版を執筆されたようです。

 

 アベノミクスにおいては、あたかも官邸の政策執行機関の一つであるかのように、忠実に追随されていた黒田日銀体制ですが、元々、政府と日銀と言えば、有権者にいい顔をするために拡大的な財政政策を行いたい政権に対し、インフレの鎮静化のためにできるだけ財政政策の規模を制限したい日銀とのバチバチの対抗という図式が一般的だったようで、安倍官邸と黒田日銀のような協調路線は、あくまでもデフレ下でしかありえない稀有な風景だったようです。

 

 ワタクシ自身も外交官試験の受験勉強で財政・金融政策を始めとするマクロ経済学の基本的なところは勉強しましたが、流動性の罠やフラット化したフィリップス曲線など、「こんなこともあり得ます」という例外的な注釈として学んだ内容が、生きているウチに目の当たりにすることになるとは思いもよらなかったのですが、それに現実的に対応しなくてはいけない日銀の混乱が目に浮かぶような状況を紹介されているのが印象的です。

 

 出口の見えないデフレから、コロナ化やロシアのウクライナ侵攻を経て、急激なコストプッシュインフレとなり、スタグフレーションへの突入とも言われる中、日銀の混乱も如何ばかりかと感じますが、植田日銀がどのようにこの難局を乗り切るのか(それともコケるのか…)に戦々恐々とする想いです…