国力とは何か/中野剛志

 

 

 最近マイブームの中野剛志さんの著書ですが、この本は2008年の著書を2011年の東日本大震災を受けて、大幅に加筆修正されて新書化されたモノだということです。

 

 コロナ禍以前は、グローバリズムがもてはやされてナショナリズムというと内向きなイメージであまりポジティブに捉えられるものではなかったようですが、過度のグローバリズムは結局全世界規模でのコスト低減競争みたいになって、あまり個々の市民のシアワセにつながらないという傾向が強くみられるようになったということで、一定自国民のシアワセを守るという意味での「経済ナショナリズム」が必須となるのではないか、というのがこの本の主張です。

 

 「経済ナショナリズム」というと、近隣窮乏化政策や固有の資源の囲い込みのようなネガティブな側面が顕著だと感じますが、そんな中で中野さんは、「国家」というモノを、国家の制度や権力を示す「ステイト」と市民の集合体である「ネイション」をワケて考えるべきだと提唱されていて、国家権力の恣意的な行使ではなくて、市民の意思の集合体としての「ナショナリズム」で、国民のシアワセを最大化するという意味での「経済ナショナリズム」には大きな意義があるとされています。

 

 そういう提唱の中で、近年は存在感が低下しているケインズ的な経済政策に注目されているのが印象的で、アベノミクスの失敗によって無効論すらささやかれるようになった経済政策が、やはり一定の役割を持っていることを再認識させられます。

 

 ただ、経済政策と市民の意図というモノの整合性の確保というモノについて、個人的にはギモンに感じるところではあり、そういう意味でも有権者の投票行動による意思表明は必須だということで、国家権力に好き勝手させることの危険性を感じるモノでした…