シルバー・デモクラシー/寺島実郎

 

 

 財団法人日本総合研究所の理事長で、『サンデーモーニング』にコメンテイターとして出演されている寺島実郎さんが語られる団塊世代論です。

 

 タイトルの「シルバー・デモクラシー」ですが、一般的に言われる若い世代と比べて投票行動に積極的な高齢世代が恩恵を受けやすいという意味でのモノではなく、団塊の世代の民主主義へのかかわりという意味合いで使われているようです。

 

 この本は1980年から2016年までのかなり長いスパンでの団塊の世代について語られた講演や寄稿を集めた本ということで、本来戦争や安保闘争などを経て、政治思想的に一定の役割を果たすべき団塊の世代が、経済の再生に終始せざるを得ず、十分にその分野で貢献をしてこれなかったために、政治的な土壌が貧困な国になってしまったという悔恨とともに、遅まきながら「遺言」として伝えておくべきメッセージとしての日本におけるあるべき民主主義を語られます。

 

 戦後復興という意味で、どうしてもある程度経済的な活動に注力せざるを得ない部分はあったのでしょうけど、どこかでその転換を図るべきタイミングがあったのではないか、というのはもっともなところで、そのためか日本人の社会性や政治的な志向が著しく低下してしまったことで、政治的な貧困を招き、ややもすれば自分さえよければいいという感覚を多くの日本人が持ってしまったのではないか、ということです。

 

 イザという時には公助の姿勢を惜しまない日本人なので、何かのキッカケがあれば社会性を取り戻すことはあり得るんでしょうけど、困難な時期を経験した先達に重要な役割を果たしてもらいたいところです。