11人の考える日本人/片山杜秀

 

 

 『平成史』で”知の怪人”佐藤優さんと共著者である思想家の片山杜秀さんが幕末から戦後に至るまでの11人の思想家について語られた本です。

 

 冒頭で取り上げられているのが吉田松陰で、思想家として取り扱うのか…というのがまず素朴な印象ですが、その思想というのがあくまでも軍学者としてのリアリズムに基づくものだという指摘が印象的で、あくまでも天皇をトップに戴くのは、単に尊王ということだけではなく、侵略窺う諸外国に対峙するためには国が一丸となってコトにあたるのに最も多くの人がナットクしやすく、引いては体制が整えやすいからだということです。

 

 次に取り上げられている福沢諭吉は徹頭徹尾、経済的なメリットの追求を前提としているのが意外ではあったのですが、早稲田が政経学部が看板となっているのに対して、慶応は経済学部が看板になっているのもそういうことみたいです。

 

 北一輝とか柳田國男岡倉天心など、思想家として取り上げられていることにギモンを感じる人もなくはないのですが、それぞれ現在の日本人の思考の形成に重要な役割を果たされたことに間違いは内容です。

 

 これまでちょっととっつきにくかった小林秀雄を「天才的保守主義」と言ってみたり、丸山真男を「戦後民主主義創始者」といったわかりやすいキャッチフレーズを付けてくれているところも理解の一助となっていて、難解な思想を少し紐解くことができた気がします。