『妻のトリセツ』の黒川さんがコロナ禍での在宅勤務で、夫婦が四六時中顔を突き合わせいなければならない状況になったのを受けて、その際の主に奥様の側からの悩みにこたえるというカタチで構成された本です。
そもそも夫婦というのは、狩猟時代の習性で、男性は獲物を狩ったり危険から家族を守るために遠くの目標に照準を合わせるようにできているのに対し、女性は目の前のものつぶさに感知して、次々と処理していくという風に、それぞれが異なる役割を果たすユニットとして機能しており、そもそも志向や考えていることが一致しないのが本能で、ずっと顔を突き合わせているとその際にお互い違和感を感じざるを得ないということです。
そんな中で双方が爆発せずに平穏に過ごすためには、お互いに配慮が必要だということは、黒川さんがこれまでの著書で述べられていたことを切り口を変えて語られているということですが、お互い家で仕事をしているにもかかわらず、ダンナが奥様に昼飯がどうのとかというのは、まあ冷静に傍から見ていると奥様はムカつくだろうなぁ、ということは理解できます。
そこで提唱されているのが、奥様側が自分が担っている家事を詳らかにし、どれだけ大変なことをしているのかを「見える化」することで、ダンナとの分業の端緒としようということで、ダンナの側に一定の家事をミッションとして与えると、ミッション遂行の本能を持つ男性としては粛々とこなしていってくれる可能性が高いということです。
また、ダンナの「詮索」に思えるような発言も、それが必ずしも糾弾しようとしているワケではなく、ただ単に状況判断のための情報収集だと落ち着いて受け止めることで、随分と諍いのタネが減るんじゃないかということです。
ほとんどの家庭が現在では夫婦どちらも在宅勤務という状況は解消されているでしょうけど、例えばリタイア後などに同様の状況になることもあるということで、この本でのケーススタディを夫婦の双方が一読しておくのは、お互いの精神衛生上、かなり有用なことなんじゃないかと思えます。
それにしてもいつもこのテのトピックが出てきたときに思うのですが、狩猟時代なんて最早数千年前に手放した生活習慣なのに、未だその時のための習性が抜けないというのは、フシギなもんだなぁ…ということです。