ヤフー・トピックスの作り方/奥村倫弘

 

ヤフー・トピックスの作り方 (光文社新書)

ヤフー・トピックスの作り方 (光文社新書)

 

 

 先日紹介した川上徹也さんの『一言力 (幻冬舎新書)』で紹介されていたので、手に取ってみました。

 この本の著者は、新聞記者を経てヤフー・トピックスの編集に携わっておられる方です。

  ヤフー・トピックスを日々見ている人は多いと思いますが、『一言力』で取り上げられていたのは、トピックスのタイトルをわずか13文字で、内容を見る側に想起させてクリックしてもらえるようにするということで、コトバの編集力について触れられていましたが、日々のトピックス掲載の置ける具体的な取り組みを紹介されます。

 また、どのニュースをトピックスとして取り上げるかということについて、時々刻々アクセス数という結果と向き合わないといけない状況にありながら、それを重視しつつもポピュリズムに陥らないよう、「知っておくべき」ニュースを、アクセス数が限定的になると想定しながらも掲載するということを継続しているという姿勢には感銘を受けました。

 ある意味、情報収集をネットに依存している人は、こういう姿勢に救われているのかもしれません。

 

キャラ立ちの技術/杉村貴代

 

キャラ立ちの技術―自分ブランドをつくろう!

キャラ立ちの技術―自分ブランドをつくろう!

 

 

 何かの本の推薦図書だったんですが、どの本だったか忘れてしまいました…

 冒頭に「自分探し」について触れられていて、それをすぐに退職に結び付けた挙句、ジョブホッパーになったりして、逆に可能性を狭めてしまうこともあり、だったらこんな方法もありますよ、ということで自分のキャラを押し出して、それをキッカケとして自己実現を図ろうとススメられています。

 この「キャラ立ち」と言うのは、自分がどう見られているかということと、どう見られたいかということを冷静に見極めて、どんな要素が自分に取ってプラスに作用するのかということを判断した上で、どういう風に改善していくかということを考えます。

 現時点で「自分がどう見られているか?」という側面において、自分で意識していなかったり、もしくは自分ではあんまり好ましくないと思っていることであっても、見ている方としてはプラスの評価をしているという場合もあるので、その辺りをどう今後の自分に活かしていくのかということも、重要な要素となるはずです。

 なんにせよ「自分探し」というのは多くの場合「自己実現」と重なるところが多く、それには「周囲の評価」というのも重要な要素であるはずです。

 そういう意味で周囲からの評価をどう変えていくか、というこの本が提唱していることは「自分探し」にも役立つはずなんですが…多くの「自分探し」の人は「そうじゃないんだよ…」を感じるでしょうけど…

 

性と国家/北原みのり、佐藤優

 

性と国家

性と国家

 

 

 「知の巨人」佐藤さんが、フェミニズムの論客北原さんと「性」と国家のかかわりを語ります。

 佐藤さん自身、かなり突っ込んだ議論となったとおっしゃいますが、ガチで論争をしたというワケではなく、お二方の指向するところにそんなに大きな差異はないので、北原さんのおっしゃることに対して、諸外国での状況や、佐藤さんの専門であるキリスト教の教義上どうだったか、ということを解説するといった具合です。

 お二方の議論によると、どうも日本はかなり性的なモノに寛容すぎる部分があるようで、例えば日本でフツーに流通している雑誌を外国に送ろうとしたら、児童ポルノに該当する部分があってマズいなど…

 そういういい加減な部分が理解されないという側面も長らく韓国や中国との間で懸案となっている慰安婦問題の紛争の要素であるようです。

 また、性風俗の業界と言うとアンダーグラウンドな印象がありますし、諸外国ではまさにその通りなのですが、日本の場合、実はバックに警察の影響力が働いていたりと、隠然と公権力が作用しているということで、これは非常に珍しいと同時に、かなり恥ずかしい状況であるようです。

 そういう総合的に、男性の性にアマいというところが、女性の人権の向上が進まないことの一因であるようで、その辺り、もうちょっと問題になってもいいんじゃないかな、とこの本を読んだら、きっと女性陣の大半は怒ると思うのですが…

 

中流崩壊/榊原英資

 

中流崩壊 日本のサラリーマンが下層化していく(詩想社新書)

中流崩壊 日本のサラリーマンが下層化していく(詩想社新書)

 

 

 大蔵省(現財務省)において国際金融を手掛けられ「ミスター円」と呼ばれて辣腕を振るわれた榊原さんによる、昨今の経済論です。

 ただ、やたらと統計関連の引用が多くて、かつタイトルに関わる内容は最後の方の20ページ程ということで、学者のセンセイ方が書かれた本を思い起こしましたが、そこはさすがに実務家のシゴトということで、それなりの教訓はあります。

 この本は2015年に書かれたということで、アベノミクスがまだ一定の成果を見せていた頃になるのですが、榊原さんはインフレ誘導政策に疑問を呈されていて、すでに日本はヨーロッパ諸国同様、低成長の局面にあるので、むしろマイルドなデフレ状態が妥当なのではないかとおっしゃいます。

 またタイトルに関わるところで、グローバル経済の進展により、これまで「中流」を形成してきたサラリーマン層の2極分解が顕著となっていおり、新興国でも代行できるような業務に携わっているモノは、容赦なく非正規化されていくということで、今後の日本の経済を維持していくためにも、若年層の支援を厚くしていく必要性を強調されています。

 ただそこは旧大蔵省出身者ということで、ただただ財政出動を増やすというワケではなく、財政均衡を見据えつつ…ということで、ヨーロッパ諸国で行われている「高負担・高福祉」型を提唱されています。

 これって、結構喫緊の課題だと思えるのですが、そういう動きって見られないですねぇ…

 

おとなの教養/池上彰

 

 

 かつて大学では、まず教養課程において基盤となる教養を身につけた上で専門課程に進んでいたのですが、ほとんどの大学で教養課程を無くしてしまって、一般教養科目ということでお茶を濁すことになって日本人の教養レベルが目に見えて落ちたと指摘する向きもあります。

 それでも未だ身に付けるべき教養があるんじゃないか、と言うことで池上さんが現代の日本におけるリベラルアーツとして、

  宗教、宇宙、人類の旅路、人間と病気
  経済学、歴史、日本と日本人

を挙げられていて、「私たちはどこから来て、どこへ行くのか?」という戦略を立てる上で、こういった「教養」が必要になると指摘されます。

 特に印象的だったのが歴史の部分で、歴史なんて学校で習って知っている…というワケには行かなくて、あくまでも我々が学校で習うのは「勝者」が自分の都合のいいように「洗脳」するための一つの手段だということで、我々が教養として身に付けるためには、背景の理解や様々な観点からの考察が重要なようです。

 「すぐに役に立つことは、すぐに役に立たなくなる」ということで、じっくりと腰を据えてこういうことを学ぶということが、これから先、より重要になるのかも知れません。

 

「知」の強化書/本郷陽二

 

「知」の強化書: 達人の「知的習慣」を読む (小学館新書 229)

「知」の強化書: 達人の「知的習慣」を読む (小学館新書 229)

 

 

 光文社のスゴ腕編集者として知られる本郷さんが、これまで付き合いのあった著者を始めとした、名だたる方の著書を手掛かりに、知性の強化を図る術を語ります。

 「知」の強化の要素として、

  ・読書
  ・時間の活用
  ・整理術
  ・発想力
  ・書く力
  ・思考力

を向上させるための方法論を紹介します。

 今や古典と言える梅棹さんの『知的生産の技術』や渡部昇一さんの『知的生活の方法』から、近年の池上彰さんや本田直之さんの著書まで幅広く扱われています。

 

サッカー名将・名選手に学ぶ48の法則/小宮良之

 

サッカー名将・名選手に学ぶ48の法則 (中公新書ラクレ)
 

 

 ヘスス・スアレスさんとの共著を、このブログでも立て続けに紹介してきた小宮さんの単独での著書を紹介します。

 あとがきに触れられているのですが、小宮さんはこれまでのサッカーライターとしてのキャリアにおいて、勝ったからホメる、負けたからケナすということではなく、負けたからと言ってもよかったところはホメる、勝ったからと言ってもダメなところは指摘するための自分の中のブレない基準を持とうとされてきたということですが、ある意味集大成的に書かれたのがこの本のようです。

 どんなことでもある程度当てはまるんでしょうけど、丸いボールを足で扱うという不確実性の高い協議特性からか、他のいかなるモノと比べても、不変の成功法則と言うモノが極端に少ないのがサッカーのようで、つい数年前まで隆盛を極めたバルサの成功法則を世界中のチームがマネようとして失敗したのが象徴的です。

 でもだからと言って、あるところで失敗したからと言って、同じような方法論を用いて他のところで成功するということもありえるのが面白いところです。

 だからサッカーの世界で成功するには柔軟性が必要なワケですが、逆に確固たるポリシー無きところに成功は覚束ないというのも多くの場面で当てはまるようです。

 そういう矛盾に満ちているがゆえに、我々はサッカーに魅せられてやまないのかもしれません。