下流社会 第2章/三浦展

 

下流社会 第2章  なぜ男は女に“負けた

下流社会 第2章 なぜ男は女に“負けた"のか (光文社新書)

 

 

 昨日紹介した『下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)』の第2弾です。

 前著の2年後である2007年の出版された本なのですが、「その後」を追うというよりも、深堀をするという趣旨なのですが、内容が被っているところが多くて、ちょっとビミョーです。

 主に「下流」の嗜好を追うカタチで深堀をしているのですが、男性の「下流」が内向きで暗い雰囲気なのに対し、女性は開き直っているのか、下流でも結構明るい雰囲気が漂うのは、やっぱり女性の「強さ」なんでしょうか…

 

下流社会/三浦展

 

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)

 

 

 「自分探し」関連だったり「婚活」関連だったりの本に参考図書として挙げられているのを何度を見たので、手に取ってみました。

 この本は2005年なのですが、いわゆる「失われた20年」の真っ只中だったということで、かなりヒットしたようです。

 かつて「一億総中流社会」といわれていたのですが、その頃は全体の6割の人が自分を「中流」だと思っていたということですが、段々とその意識が「下」に向いて行っているということです。

 不況の影響もあるのですが、かつての終身雇用制が崩壊し、さらには雇用の非正規化が進んでいることもあるようです。

 この本では、その時点の「下流」意識よりも、今後の生活水準が向上すると思うか?という問いに対する回答が問題になっていて、「下流」の大半が悲観的な回答をしているところが問題だと指摘されています。

 さらに「下流」のモノの考え方や嗜好についても触れられているのですが、実は「自分探し」に強い関心を示す人は下層に位置づけられる人に多いということで、卵が先か鶏が先かという話もあるのですが、「自分探し」はあんまりシアワセにつながる確率が高くないようです。

 

少子社会日本/山田昌弘

 

少子社会日本―もうひとつの格差のゆくえ (岩波新書)

少子社会日本―もうひとつの格差のゆくえ (岩波新書)

 

 

 「婚活」と言うコトバをメディアで使い始めた山田先生の「婚活」以前の本です。

 2007年出版の本なんですが、その15年前位から少子化の傾向が高まっていたのですが、有効な手立てが打たれぬまま、かなり深刻な状況になったワケですが、その後10年近く経った現在においても、相変わらず有効な手立ては打たれていません。

 少子化が進展した理由って、まあ複合的なモノがあるんでしょうけど、一番大きな理由としては晩婚さらに最近は生涯結婚しない人が出てくるなど、婚姻率の著しい低下を指摘されています。

 ある程度経済が発展すると、それにつれて婚姻率が低下するのは、大きな趨勢としては仕方がない部分もあるようです。

 というのも、実家がそれなりに裕福になって経済的な不安がなければ、結婚することにより生活レベルが低下してしまう可能性が高く、結婚への誘因が下がるからです。

 それに加えて、非正規社員の増加で結婚できるだけの経済力を持った人が減ってしまい、さらに婚姻率が下がることとなってしまったようです。

 ということで、結婚する世代に対して、何らかのサポートが必要なのですが、あまりコンセンサスができていないようで、このままじゃジリ貧ですよね…

 

日本の童貞/渋谷知美

 

日本の童貞 (文春新書)

日本の童貞 (文春新書)

 

 

 この本の著者、実は女性で、修士論文として書かれたモノがベースとなっているということですが、学術論文らしくカタい文章でありながら、書かれている内容はセックス関連という、なかなかブッ飛んだモノです。

 出版されたのは2003年ということで、既に一世代前の状況となりますが、そこまでの「童貞」論の変遷をたどります。

 ワタクシの学生時代はバブル期の最終期で、大学生も「童貞」を「恥」だとおもう風潮がありましたが、1960年代位には、「処女を嫁に迎えるのであれば、男性も妻に童貞を捧げるべきだ!」という主張が広く受け入れられていたというから驚きです。

 「童貞」論と並行して男女の貞操観念の差異について語られますが、一般に女性には貞操が求められるのですが、男性にはそんな考えはなかった時代が長く続いたことに、この国の男性への「甘さ」がうかがえます。

 その後、ワタクシどもが体験したように、童貞が「恥ずかしい」モノとされるようになり、特に30歳代以降の男性を「気持ち悪い」とまで言われるようになった変遷に触れられます。

 最近では「草食男子」なんていうコトバもあるように、よりそういう人たちが増えてきていて、今はどんな風に受け止められているんだろうという興味がわきますし、逆に「できちゃった婚」がそんなに違和感を感じることではなくなってきていることなどを見ると、性の意識に相当多様化が進んでいるんだなぁ…と感じます。

 

企画書は1行/野地秩嘉

 

企画書は1行 (光文社新書)

企画書は1行 (光文社新書)

 

 

 川上さんの『一言力 (幻冬舎新書)』で参考図書として取り上げられていたので、手に取ってみました。

 この本も短い言葉で言い切ることのパワーを紹介されているのですが、企画書が1行で終えてしまうということではなくて、企画書に込めた想いを1行で言い切ることができるくらい煮詰めていなければ、その企画の成功は覚束ないんじゃないか、ということで、ふんだんに事例に乗せて紹介されます。

 企画書っていうと、テクニカルな側面ばかりが強調されますが、その企画に込められた思いの深さこそが成否を左右する、最大の要因だということで、その思いを凝縮して、企画の実現しようとする世界を聞き手と共有することができるような1行を絞り出すことができれば、おのずから聞き手からの共感を得ることができ、成果につながるということです。
 
 そういう腹の底から絞り出すようなコトバをモノにするための血を吐くような想い…そこまでの取組があるんだ、ということを思い知りました。

 

なぜ若者は「半径1m以内」で生活したがるのか?/岸本裕紀子

 

なぜ若者は「半径1m以内」で生活したがるのか? (講談社+α新書)

なぜ若者は「半径1m以内」で生活したがるのか? (講談社+α新書)

 

 

 昨日に引き続き「若者論」に関する本です。

 この本は2007年に出版された本で、著者は『non-no』編集部に勤務後渡米し、女性論などの著作があり、大学での教鞭も取られている方のようです。

 「半径1m以内」と言うのは、若者の生態の一部を示していて、この本の最後に、近年の若者の嗜好を表すキーワードとして、

 「地元」「家族」「日本」「堅実」

を挙げられていて、その前のバブル世代などと比べて、就職その他で、ある意味不当な苦難を強いられたこともあって、ある種の「諦念」みたいなモノがあるような気がします。

 上の世代からすると、覇気がないとか言いたくなるところはあると思いますが、「足るを知る」ということを心得ており、必要以上のモノを求めないという意味で、個人的にはバランスが取れていて、いいんじゃないかな、と思うのですが… 

 

おゆとりさま消費/牛窪恵

 

 

 若年層の消費行動に精通したマーケティング・ライターである牛窪さんの「おゆとりさま」と呼ばれる世代の消費行動に関する本です。

 「おゆとりさま」って言い方をワタクシ、知らなかったのですが、いわゆる「ゆとり教育」世代で、不況に育ちながらも、親がバブル世代であるために、堅実でありながらもブランドにも興味があり、バランスの取れた消費行動をするようです。

 先日紹介した牛窪さんの著書で取り上げられていたプチパラにも通じるところがあり、親と仲が良く、親に乗っかった消費も上手で、ブランドモノなどの高価なものは上手に親におねだりし、自腹では身の丈に合ったコスパのよいモノを好むというチャッカリした側面があるということです。

 基本的にあまり進んでおカネを使わないようですが、仲間とのコミュニケーションに役立つことについては積極的におカネを使うところがあるようで、マーケティング的にはそういうところを刺激して、需要を喚起するようです。

 ちなみにこの本は2010年出版なので、今なお有効なのかは不明ですが…