やばい老人になろう/さだまさし

 

 

 歌手のさだまさしさんがご自身が偉大なる「じじぃ」「ばばぁ」たちから受けてきた薫陶を踏まえて語られる「老人力」についての本です。

 

 以前、NHKの『ファミリーヒストリー』という家族のルーツをたどる番組でさださんのご家族について紹介されていたのですが、そこで紹介されたさださんのお祖母さんが、ちょっとした冒険小説バリの壮絶な経験をされてきたのを見たのですが、さださん自身がお祖母さんっ子で、そもそもそういうケタ外れのお年寄りから薫陶を受けたのがキッカケなのか、その後も偉大なる「じじぃ」「ばばぁ」からの教えを受けてきます。

 

 そもそもデビューのキッカケとなったのが、お父様とお付き合いのあった、『まぼろしの邪馬台国』などの著作で知られ、城山三郎さんの『盲人重役』のモデルでもある宮崎康平さんにススメられたということなんだそうです。

 

 デビュー後も、井伏鱒二さんや永六輔さん、小沢昭二さんなど名だたる名士たちにかわいがられ、その教えを受けてきたということなのですが、さださん自身も最近は、湘南乃風の若旦那さんや森山直太朗さん、ナオト・インティライミさんなどの慕われて、かつてご自身が名だたる大家たちと語らったような交流をされているということです。

 

 さださん自身、最近は高齢者と若い人の交流が少なくなっていることに危機感を感じられているということで、最近の日本社会の低調さは、そういうところにも原因があるんじゃないかとおっしゃっておられ、何とかして老人たちの”知恵”を少しでも後世に受け継げるようにならないか、と憂いておられるようです。

 

 最近は、物わかりのよさげな老人ばかりが多くなってきているようですが、さださん自身は、ある意味薄情なんじゃないかとおっしゃっておられ、昔のガンコじじいは、実は思いやりの延長線上で子供たちを叱っていたという側面もあるのではないかともおっしゃいます。

 

 最近は世代間の分断などということも取り沙汰されてはいますが、何かもうちょっとお互い歩み寄ることで、得るものは多いんだということを感じさせられました。