ユニクロやキリンビールといった名だたる大企業のアートディレクションを手掛けたことで知られる佐藤可士和さんが語る”整理法”です。
冒頭で、「なぜ、アートディレクターが整理術を?」とおっしゃられていて、世間的にはアーティスティックなイメージを持たれがちなアートディレクターですが、個人的には数年前に社内のアートディレクションを手掛ける部門音デザイナーの方と仕事をすることがあったのですが、その仕事の進め方があまりにもロジカルなのにオドロいたのをよく覚えています。
特に企業でのアートディレクションなんて、消費者なり取引先なりに”伝わってナンボ”の世界ということもあり、どこをどうしたらどう伝わるのかということについて、色使いやカタチにしてもイチイチ理由があるようです。
そういう意味で、アートディレクターこそが”整理術”を語るのに最も適性があるといっても過言ではないと思うのですが、この本では、
空間の整理…整理するには、プライオリティをつけることが大切
情報の整理…プライオリティをつけるためには、視点の導入が不可欠
思考の整理…視点を導入するためには、まず思考の情報化を
という三段階で整理していくことで、クライアントの潜在的な考え方を含めて顕在化させ、より効果的なアートディレクションを展開されたことを、ユニクロやキリンビールなどの実際に手掛けられた事例をベースに紹介されています。
特に三段階目の「思考の整理」では、ある程度の要求がクライアントからは出てくることはあるモノの、その要求が必ずしもクライアント自身が目指している方向性と直結しているとは限らないということで、色んな視点から見直した上で、それをクライアントに諮り、ホントにそれが長い目で見て、目的と合致しているのかをクドイくらいにすりあわされている様子を紹介されています。
こういう徹底した本質思考こそが佐藤さんがアートディレクターとして多くの企業から支持されている理由なんでしょうし、我々も仕事をする上で、根本的な目的と今やっていることの関連を常に意識していないと、結果につながる仕事にならないんだなぁ、と改めて実感した次第でした。