日本の童貞/渋谷知美

 

日本の童貞 (文春新書)

日本の童貞 (文春新書)

 

 

 この本の著者、実は女性で、修士論文として書かれたモノがベースとなっているということですが、学術論文らしくカタい文章でありながら、書かれている内容はセックス関連という、なかなかブッ飛んだモノです。

 出版されたのは2003年ということで、既に一世代前の状況となりますが、そこまでの「童貞」論の変遷をたどります。

 ワタクシの学生時代はバブル期の最終期で、大学生も「童貞」を「恥」だとおもう風潮がありましたが、1960年代位には、「処女を嫁に迎えるのであれば、男性も妻に童貞を捧げるべきだ!」という主張が広く受け入れられていたというから驚きです。

 「童貞」論と並行して男女の貞操観念の差異について語られますが、一般に女性には貞操が求められるのですが、男性にはそんな考えはなかった時代が長く続いたことに、この国の男性への「甘さ」がうかがえます。

 その後、ワタクシどもが体験したように、童貞が「恥ずかしい」モノとされるようになり、特に30歳代以降の男性を「気持ち悪い」とまで言われるようになった変遷に触れられます。

 最近では「草食男子」なんていうコトバもあるように、よりそういう人たちが増えてきていて、今はどんな風に受け止められているんだろうという興味がわきますし、逆に「できちゃった婚」がそんなに違和感を感じることではなくなってきていることなどを見ると、性の意識に相当多様化が進んでいるんだなぁ…と感じます。

 

企画書は1行/野地秩嘉

 

企画書は1行 (光文社新書)

企画書は1行 (光文社新書)

 

 

 川上さんの『一言力 (幻冬舎新書)』で参考図書として取り上げられていたので、手に取ってみました。

 この本も短い言葉で言い切ることのパワーを紹介されているのですが、企画書が1行で終えてしまうということではなくて、企画書に込めた想いを1行で言い切ることができるくらい煮詰めていなければ、その企画の成功は覚束ないんじゃないか、ということで、ふんだんに事例に乗せて紹介されます。

 企画書っていうと、テクニカルな側面ばかりが強調されますが、その企画に込められた思いの深さこそが成否を左右する、最大の要因だということで、その思いを凝縮して、企画の実現しようとする世界を聞き手と共有することができるような1行を絞り出すことができれば、おのずから聞き手からの共感を得ることができ、成果につながるということです。
 
 そういう腹の底から絞り出すようなコトバをモノにするための血を吐くような想い…そこまでの取組があるんだ、ということを思い知りました。

 

なぜ若者は「半径1m以内」で生活したがるのか?/岸本裕紀子

 

なぜ若者は「半径1m以内」で生活したがるのか? (講談社+α新書)

なぜ若者は「半径1m以内」で生活したがるのか? (講談社+α新書)

 

 

 昨日に引き続き「若者論」に関する本です。

 この本は2007年に出版された本で、著者は『non-no』編集部に勤務後渡米し、女性論などの著作があり、大学での教鞭も取られている方のようです。

 「半径1m以内」と言うのは、若者の生態の一部を示していて、この本の最後に、近年の若者の嗜好を表すキーワードとして、

 「地元」「家族」「日本」「堅実」

を挙げられていて、その前のバブル世代などと比べて、就職その他で、ある意味不当な苦難を強いられたこともあって、ある種の「諦念」みたいなモノがあるような気がします。

 上の世代からすると、覇気がないとか言いたくなるところはあると思いますが、「足るを知る」ということを心得ており、必要以上のモノを求めないという意味で、個人的にはバランスが取れていて、いいんじゃないかな、と思うのですが… 

 

おゆとりさま消費/牛窪恵

 

 

 若年層の消費行動に精通したマーケティング・ライターである牛窪さんの「おゆとりさま」と呼ばれる世代の消費行動に関する本です。

 「おゆとりさま」って言い方をワタクシ、知らなかったのですが、いわゆる「ゆとり教育」世代で、不況に育ちながらも、親がバブル世代であるために、堅実でありながらもブランドにも興味があり、バランスの取れた消費行動をするようです。

 先日紹介した牛窪さんの著書で取り上げられていたプチパラにも通じるところがあり、親と仲が良く、親に乗っかった消費も上手で、ブランドモノなどの高価なものは上手に親におねだりし、自腹では身の丈に合ったコスパのよいモノを好むというチャッカリした側面があるということです。

 基本的にあまり進んでおカネを使わないようですが、仲間とのコミュニケーションに役立つことについては積極的におカネを使うところがあるようで、マーケティング的にはそういうところを刺激して、需要を喚起するようです。

 ちなみにこの本は2010年出版なので、今なお有効なのかは不明ですが…

 

ヤフー・トピックスの作り方/奥村倫弘

 

ヤフー・トピックスの作り方 (光文社新書)

ヤフー・トピックスの作り方 (光文社新書)

 

 

 先日紹介した川上徹也さんの『一言力 (幻冬舎新書)』で紹介されていたので、手に取ってみました。

 この本の著者は、新聞記者を経てヤフー・トピックスの編集に携わっておられる方です。

  ヤフー・トピックスを日々見ている人は多いと思いますが、『一言力』で取り上げられていたのは、トピックスのタイトルをわずか13文字で、内容を見る側に想起させてクリックしてもらえるようにするということで、コトバの編集力について触れられていましたが、日々のトピックス掲載の置ける具体的な取り組みを紹介されます。

 また、どのニュースをトピックスとして取り上げるかということについて、時々刻々アクセス数という結果と向き合わないといけない状況にありながら、それを重視しつつもポピュリズムに陥らないよう、「知っておくべき」ニュースを、アクセス数が限定的になると想定しながらも掲載するということを継続しているという姿勢には感銘を受けました。

 ある意味、情報収集をネットに依存している人は、こういう姿勢に救われているのかもしれません。

 

キャラ立ちの技術/杉村貴代

 

キャラ立ちの技術―自分ブランドをつくろう!

キャラ立ちの技術―自分ブランドをつくろう!

 

 

 何かの本の推薦図書だったんですが、どの本だったか忘れてしまいました…

 冒頭に「自分探し」について触れられていて、それをすぐに退職に結び付けた挙句、ジョブホッパーになったりして、逆に可能性を狭めてしまうこともあり、だったらこんな方法もありますよ、ということで自分のキャラを押し出して、それをキッカケとして自己実現を図ろうとススメられています。

 この「キャラ立ち」と言うのは、自分がどう見られているかということと、どう見られたいかということを冷静に見極めて、どんな要素が自分に取ってプラスに作用するのかということを判断した上で、どういう風に改善していくかということを考えます。

 現時点で「自分がどう見られているか?」という側面において、自分で意識していなかったり、もしくは自分ではあんまり好ましくないと思っていることであっても、見ている方としてはプラスの評価をしているという場合もあるので、その辺りをどう今後の自分に活かしていくのかということも、重要な要素となるはずです。

 なんにせよ「自分探し」というのは多くの場合「自己実現」と重なるところが多く、それには「周囲の評価」というのも重要な要素であるはずです。

 そういう意味で周囲からの評価をどう変えていくか、というこの本が提唱していることは「自分探し」にも役立つはずなんですが…多くの「自分探し」の人は「そうじゃないんだよ…」を感じるでしょうけど…

 

性と国家/北原みのり、佐藤優

 

性と国家

性と国家

 

 

 「知の巨人」佐藤さんが、フェミニズムの論客北原さんと「性」と国家のかかわりを語ります。

 佐藤さん自身、かなり突っ込んだ議論となったとおっしゃいますが、ガチで論争をしたというワケではなく、お二方の指向するところにそんなに大きな差異はないので、北原さんのおっしゃることに対して、諸外国での状況や、佐藤さんの専門であるキリスト教の教義上どうだったか、ということを解説するといった具合です。

 お二方の議論によると、どうも日本はかなり性的なモノに寛容すぎる部分があるようで、例えば日本でフツーに流通している雑誌を外国に送ろうとしたら、児童ポルノに該当する部分があってマズいなど…

 そういういい加減な部分が理解されないという側面も長らく韓国や中国との間で懸案となっている慰安婦問題の紛争の要素であるようです。

 また、性風俗の業界と言うとアンダーグラウンドな印象がありますし、諸外国ではまさにその通りなのですが、日本の場合、実はバックに警察の影響力が働いていたりと、隠然と公権力が作用しているということで、これは非常に珍しいと同時に、かなり恥ずかしい状況であるようです。

 そういう総合的に、男性の性にアマいというところが、女性の人権の向上が進まないことの一因であるようで、その辺り、もうちょっと問題になってもいいんじゃないかな、とこの本を読んだら、きっと女性陣の大半は怒ると思うのですが…