はじめての人のための3000円投資生活/横山光昭

 

はじめての人のための3000円投資生活

はじめての人のための3000円投資生活

 

 

 この本でも何度か著書を紹介したことがありますが、家計再生コンサルタントの横山さんの著書です。

 横山さんはこれまで、ほとんど破綻状態の家計の再建をサポートされてきたところを著書で紹介されて来ましたが、この本はその延長線上で、何とか生活の収支をイーブンにできた人に、月3000円を絞り出すことで、その後の展開を劇的に好転させようということで提唱されているようです。
 
 投資の手法としては、インデックス投信を中心にということで、マイルドな投資の手法として多くの投資本で紹介されている内容と被るのですが、横山さんの場合、その種銭の作り方において差別化を計っているような気がします。

 確かに月3000円で投資のベースができるとなると勇気が出ますよね!?

 

女子高生サヤカが学んだ「1万人に1人」の勉強法/美達大和・山村サヤカ&ヒロキ

 

 

 殺人による無期懲役囚とちょっと変わっているけどごくフツーの女子高生とその弟との文通によって構成された本です。

 そもそもこの二人のお母さんが無期懲役囚・美達さんの書いた『人を殺すとはどういうことか』を読んで美達さんに手紙を書き、その手紙の深さに感銘を受けて、ムスメたちに手紙を書いてみたら…という破天荒な経緯で始まった文通のようです。

 タイトルに「勉強法」とありますが、勉強法に限らず「生き方」に近いモノで、美達さんは無期懲役囚ではありますが、犯罪者にありがちなすさんだところはなく、どっちかというと真逆の“求道者”ともいう佇まいを感じさせる人物です。

 「1万人に1人」というのは本の中に出てくる「99.99%の人は自分に甘い」というところから来ているんだと思うのですが、若い頃に自分がやるべきこと、もしくはやると決めたことを丹念にやり続けるクセをつけることで、その後の人生において思い描いたようなことを実現できるということです。

 ただ、ほとんどの人はそれができていないので、なかなか思い通りの人生を送れないということのようです。

 それにしても、この静かな熱意には、ココロを揺さぶられるモノがあります。

 

ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語/田村明子

 

ニューヨーカーに学ぶ 軽く見られない英語 (朝日新書)

ニューヨーカーに学ぶ 軽く見られない英語 (朝日新書)

 

 

 度々タイトルにクレームで恐縮ですが、タイトルを見た瞬間は、ちょっとイラッとして、手に取るかどうか迷ったのですが、どうも著者の真意は別のところにあったような内容で、ちょっとホッとしました。

 タイトルへの文句はとりあえず置いといて…

 どっちかと言うと、英語そのものと言うよりも、どういう風にコミュニケーションを取るか、という方がふさわしい気がしますし、「軽くみられる」というよりも、円滑にコミュニケーションをするための…と言った方が内容にふさわしい気がします。

 コトバとしての英語はモチロン、コミュニケーションのためのツールとして重要ではありますが、それを十全に使いこなせたとしても、ハートの部分が伴っていなければ、寧ろ流暢に話すことが逆効果になりかねないことを指摘されています。

 アメリカって個人主義だと言われますが、様々なルーツを持った人々が集まる社会だけに、日本のような“空気を読む”ということを期待できないだけに、可能な限り口に出して意志を示す必要があり、感謝にしろ、怒りにせよ、ちゃんと明確にするようにする態度が必要なんだな、ということを、キッチリ肝に銘じておかないと…ということを再確認させられる本です。

 それにしても、確かにこのタイトルの方が売れるんでしょうけど、だからと言ってあんまり内容と離れたタイトルにするのって、どうなんでしょうね…

 

「サッカー代表監督」本当の名将は誰か/国吉好弘

 

「サッカー代表監督」 本当の名将は誰か(詩想社新書)

「サッカー代表監督」 本当の名将は誰か(詩想社新書)

 

 

 タイトルには「誰か」とありますが、この本の中で「誰か」を特定しようとしているワケではありません。

 そういう意味ではタイトルに偽りありなのですが、どっちかというと「勝つための代表監督の条件」というタイトルの方がふさわしいのかもしれません。

 選手の能力を見極める目だったり、寄せ集めのチームをまとめあげるマネジメント脳力だったり、勝負勘だったりと、伝統的に代表監督に求められる様々な能力はあるわけですが、そもそも近年のサッカーの代表チームにおける代表監督の個人的な能力が勝利に寄与する割合が下がってきているのではないか、という指摘は印象的です。

 と言うのもブラジルW杯で優勝したドイツにおいて、レーブ監督の能力の高さは間違いないのですが、ドイツのサッカー協会のバックアップ体制が勝利に寄与した割合が、かつてなくクローズアップされてしかるべきだったということと、逆に次々と優秀なプレイヤーを輩出しながらも、なかなか結果を残すことができないアフリカ諸国のサッカー協会の組織の脆弱さを、併せて指摘されています。

 日本も、協会の支援が機能した南アW杯において結果を残したことに見られるように、日本が得意な組織力を十全に発揮しての好結果をロシアW杯でも期待したいところです。

 

翻訳者はウソをつく!/福光潤

 

翻訳者はウソをつく! (青春新書INTELLIGENCE 184)

翻訳者はウソをつく! (青春新書INTELLIGENCE 184)

 

 

 特許関連を中心に翻訳者として活躍されている方が、通訳としてのトリビアを語ります。

 ‭英語→日本語、日本語→英語に翻訳する時にありがちな「ウソ」っていうか方便を語られます。

 当然異なる言語なので、ピッタリ当てはまる翻訳をスムーズに見つかることが、寧ろ僥倖なのですが、そういった中で少しでもニュアンスが通じるように、語義通りに訳せば、「ウソ」になりかねないようなモノでも、大胆に取り入れて訳さなければならない苦闘を面白おかしく語られるところが、泣けてきます。

 ロシア語通訳の米原さんがエッセイの中で、大体通訳者と言うのはウィットに富んで面白い人が多い中で、英語の翻訳者は数少ない例外だと書かれていましたが、なかなかガンバっておられます…“ガセネッタ”を自称する米原さんと異なり、多少ムリをされているところが伺えるのはご愛敬ですが…

 

SMAPと平成/中川右介

 

SMAPと平成 (朝日新書)

SMAPと平成 (朝日新書)

 

 

 2016年末に出版されたジャニーズ本紹介の第3弾なのですが、昨日紹介した『SMAPと平成ニッポン 不安の時代のエンターテインメント (光文社新書)』のほぼ同じタイトルの本がわずか10日後に出版されるというのが、SMAPの存在の大きさを実感させます。

 この本は芸能評論を多く手掛けられている方の著書で、「平成」とタイトルにはあるのですが、昨日の本のようにSMAPの社会的な意義を語るのではなく(その存在の大
きさから社会の動きと交わる部分はありすが…)て、SMAPがデビューしたのが平成の始まった前後なんで、平成の歩みとSMAPの歩みを対比して紹介する形式です。

 社会的存在としてのSMAPにあまり著者が興味を感じていないのは、SMAPが名実ともに国民的アイドルと言われるようになってからの内容はホンのわずかで、ブレイクするまでの過程に多くの紙面を割かれます。

 昨日の本でも触れらていましたが、SMAPの経歴がアイドルのカタチを変えることになったということで、偶像としてアイドルから、等身大の姿がアイドルとして存在していたということで、それまでのアイドルが若さを失うことでやがて活躍の場を失っていったのに対し、SMAPは年齢なりの魅力を発揮するようになり、活躍し続けたことで、その後のアイドルのロールモデルとなっていったことを指摘されています。

 いやあ、知れば知るほどSMAPって「深い」ですねぇ…

 

SMAPと平成ニッポン/太田省一

 

 

 2016年末に出版されたジャニーズ本紹介の第2弾ですが、社会学者がSMAPの社会的意義を語ります。

 “国民的アイドル”と言われて惜しまれながら昨年末に解散したSMAPですが、最初から順風満帆の船出をしたワケではなく、芽が出ないまま消えていく寸前だったようですが、生き残りのための様々な取組が、結局は“国民的アイドル”となることにつながったようです。

 というのも、アイドル斜陽の時期にデビューしたSMAPが、生き残るために活躍の場を広げようと、バラエティ番組などに出演するうちに、「偶像としてのアイドル」ではなく、「トナリにいるかもしれない」といった新たなアイドル像を作り出すことになり、そのイメージにピッタリな「夜空ノムコウ」そして社会現象ともなった「世界に一つだけの花」をモノにしたことで、その地位をゆるぎないモノにしたようです。

 確かに、SMAPを見れなくなったのは残念ですし、多少後味の悪さがあったことも否めませんが、ある意味十全に役割を果たしての解散だったのかもしれないな、とこの本を読んで感じました。