憲法の創造力/木村草太

 

憲法の創造力 (NHK出版新書)

憲法の創造力 (NHK出版新書)

 

 

 新進気鋭の憲法学者である木村さんの著書です。

 憲法を姿勢のコトバで語ることができると「知の怪人」佐藤さんから激賞されていた木村さんによる「憲法の入門書」という位置づけの本です。

 憲法の入門書と言うと、条文はこうで、その解釈がどうで、その判例がどうで…といった感じでオモシロくもなんともないモノが多いのですが、木村さんは実際に問題となっている訴訟における憲法上の論点を紹介した上で、憲法が想定している日本の社会の在り方に言及されます。

 どうしても憲法の本って、条文と解釈ありきの内容になってしまって、その価値が矮小化されてしまうキライがあるのですが、こういう風に生活に密着したところから、国のあるべき姿までを捉えられると、親しみがありながらもそのダイナミズムを感じることができ、きっとその後も憲法に興味を持ち続けることができるんじゃないかと思います。

 結構ユーモアのある著者なんで、難しく考えず気軽に手に取って憲法のダイナミズムに触れてください!

 

歴史に「何を」学ぶのか/半藤一利

 

 『昭和史)』の半藤さんが若い人向けに歴史を学ぶ意義について語られます。

 まえがきにもあとがきにもそういう“趣旨”は書かれていないのですが、時折「あなた方若い人たちは…」といった記述があるので、基本的には若い人がターゲットなのでしょう…(こういうのはちゃんと編集でフォローしないといけないんじゃないですかね…!?)

 どっちかと言うと、大上段に歴史を学ぶ意義とは!みたいなことを論じるのではなく、この本が書かれた2017年前後に起こった事件を交えて、また半藤さん自身がなぜ歴史をテーマに著作を手掛けるようになったのかということも交えて、歴史を学ぶ意義を紹介されます。

 よく言われるように、歴史を学ぶ意義というのは、過去の“失敗”を将来繰り返さないために、というのが大きくて、人類にとっては如何に戦争の惨禍を避けるか、ということがかなり重要なテーマなのですが、昨今の情勢を見ていると第二次世界大戦が起
こった時の状況にかなり似てきているとおっしゃいます。

 というのも、アメリカにおいてトランプ大統領が誕生したキッカケとして、アメリカの内向きな志向が顕著になったことが挙げられますが、第二次世界大戦前も、ウィルソン大統領が提唱した国際連盟への加盟を否定し、モンロー主義という内向きの政策を遂行し、ドイツではヒトラーが政権を握り、国粋主義へと突っ走って行った挙句、第二次世界大戦につながってしまいました。

 現在も、アメリカの自国至上主義、イギリスの孤立主義的なBrExitなど内向きな政策が蔓延している上、北朝鮮と言う導火線もあり、非常に危険な状況と言えそうです。

 
 「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と言われますが、こういう状況の中で戦争を避けれるかどどうか、人類の英知が試されていると言われているんじゃないでしょうか!?

 

分断社会ニッポン/井手英策、佐藤優、前原誠司

 

分断社会ニッポン (朝日新書)

分断社会ニッポン (朝日新書)

 

 

 「知の怪人」佐藤さんが民主党の代表でもあった前原さんとの共著ということで興味をひかれて手に取ってみました。

 元々共著者の井手さんの『分断社会を終わらせる:「だれもが受益者」という財政戦略』という著書があって、それをベースにした対談なんで井手センセイがリードするカタチになります。

 「分断」ということなのですが、小泉政権以降拡大して来た「格差」が広がっており、今や格差を乗り越えるための努力すらできなくなってきていることを指摘されています。

 というのも、まず下層になってしまうと結婚すらできない…できたとしても子供を持つこともできない、さらにはムリして子供を持っても満足な教育を受けさせてあげることができないということで「格差」が固定されるような状況にまでなっているということです。

 井手先生はそういった状況を打破するための方策を提唱される一環として、日本を代表する知性である佐藤さんや、国会議員である前原さんと対談されているワケですが、どうもアベ政治というのは、固定化を助長する方向にあるようで、困ったモノです…ということがあんまり顕著になっていないのがさらに大きな問題なようですが…

 

外国人が見た日本史/河合敦

 

外国人がみた日本史 (ベスト新書)

外国人がみた日本史 (ベスト新書)

 

 

 タイトルを見て、これは興味深いと思って思わず手に取ってみました。

 まだ「日本史」が存在しなかったであろう頃…中国史でいうと後漢とか魏の時代から現代に至るまでの外国での記録で紡いだ「日本史」です。

 実は隋の記録によると最初の遣隋使は小野妹子じゃなかったのではないかとか、徳川幕府の「鎖国」政策も外国から見るとそうは思われていなかったのではないか(最近は学校の授業でも「鎖国」という言い方はしないみたいですね…)とか、結構意外なことも数多く語られます。

 一番面白いのが情報量が急激に多くなる幕末のあたりなのですが、人々が裸同然で生活しているというところに「野蛮さ」を見た外国人がいる一方で、ペリー来航時に贈呈された蒸気機関車を1年後には同じようなモノを自力で作ったという技術力もあったということで、その辺りのギャップに戸惑ったところもあったようで、列強も中国で行ったような恫喝外交をためらった様子がうかがえます。

 印象的だったのがペリー来航時に、日本が文明世界の技術力を持てば強力なライバルとなりうるだろうといった趣旨の感想を漏らしたことが紹介されていることで、その後の発展をみるにつけ、慧眼としか言いようがありません。

 いや、これは着想の勝利と言うべき本ですね!

 

もう国家はいらない/田原総一朗+堀江貴文

 

 

 田原さんとホリエモンって異色の組合せって感じがするんですが、かなり以前から親交があって、堀江さんがオツトメをされていた時も変わらぬ信頼を寄せていた仲だということです。

 過激なタイトルで、著者の並びは田原さんが先になっていますが、発想自体はほとんどホリエモンから出てきています。(まあ、田原さんの引き出し方がウマいという見方
もできなくはないですが…)

 堀江さんはリアルに国家が無くても成り立っていくんじゃないかということを考えておられるということで、グローバル化が進んだ現状においては、リバリタリアリズムの考えを押し進めて行くと十分可能なんじゃないかということです。

 貨幣の発行にしてもビットコインはひと頃運営の怪しさが取り沙汰されてはいましたが、例えばモンゴルなんかだと自国の発行した通貨よりも米ドルの方が流通しているように、結局は如何に信用されるかにかかっているわけであって、それがビットコインでもよくなるかもしれない訳です。

 その他保険制度や国防、警察などの国家が現在担っている役割を代替的に担える手法について紹介されます。

 いつもホリエモンの言っていることって、理解はできてもついていけないと思うことが多かったのですが、今回は多分今まで読んだ本の中で一番ブッ飛んだ内容なはずなのに、なんとなくあり得るかも…と思えて、オカシナ気がしています。

 

もてるための哲学/小川仁志

 

もてるための哲学 (PHP新書)

もてるための哲学 (PHP新書)

 

 

 ここのところ何とか社会学を理解しようとして、何冊かの本にあたっていて、今のところ跳ね返されているのですが、実は哲学もワタクシにとって、そういう対象の1つで、小川さんの本も何冊か読んでみたのですが、哲学の色が薄いモノは楽しめたものの、濃くなると跳ね返されてきたという感じでした。

 結論から言うと、この本は「哲学」を名乗るモノの「どこが?」とツッコみたくなるほど、哲学の色は希薄です。

 ここで「もてる」と言っているのは、異性にもてるということに限らず、多くの人から慕われるといったような意味合いで使われているということです。

 ということで、人に慕われるための要素として、

  ・情熱
  ・尊敬
  ・信頼
  ・寛容
  ・自信

という要素を取り上げて、それぞれについて歴史上の人物や著名人なんかを例にして語られます。

 「哲学の色が希薄」と言いましたが、こういう人のパーソナリティを掘り下げていくのって、やっぱり「哲学」なんですかね!?

 

これ、いったいどうやったら売れるんですか?/永井孝尚

 

 

 ワタクシは未読なのですが『100円のコーラを1000円で売る方法』をベストセラーにしたマーケティングの専門家の著書です。

 マーケティングをわかりやすいものにしたいということで、身近でモノを売っているときの「困ったこと」について、マーケティングのごく基本的なトピックを使って、こ
うすれば売れるようになるんじゃない!?とか、きゃりーぱみゅぱみゅがブレイクした理由など、とっつきやすい事例を題材に語られます。

 冒頭で、とっつきやすいマーケティングの本が少ないとおっしゃっていますが、このブログで紹介しただけでも数十冊はあるはずなんですが、そういう本のリサーチはされてないんですかね?