歴史としての戦後史学/網野善彦

 

 

 以前歴史家の方が書かれて本で、網野さんのことを“日本史学会が生んだ唯一最大のスター”的な表現で紹介されていて、“○○史観”みたいに歴史家個人の歴史観が取り沙汰されるようになったのは網野先生が最初だったということで、ずっと気になっていたのですが、回顧録的な本があると知ったので手に取ってみました。

 ただ、この本、まさに網野先生の個人的な回顧録と言った感じで、淡々と関わって来られた歴史家の方と、その方々とされてきたことを述べられるのですが、かなり研究家目線というか、細かい内容が多いので、おそらく研究者じゃなければ、個々の研究者の価値もあまりわからないんじゃないかな、ということをワタクシ自身はチンプンカンプンでした。

 まあ、一頃日本史の研究者もいいなぁ、と思ったことのあるワタクシとしては、研究者としての素顔を見れてよかった部分はあるのですが、もうちょっとご自身の事蹟についての言及があってもよかったのに、というのが正直なところです。

 

パスコースがない?じゃあ、つくればいい。/小柳ルミ子

 

パスコースがない? じゃあ、つくればいい。: ルミ子の勝手にサッカー学

パスコースがない? じゃあ、つくればいい。: ルミ子の勝手にサッカー学

 

 

 熱烈なサッカーフリーク、特にバルセロナ、メッシのファンとして知られる小柳ルミ子さんのサッカー本です。

 年間2000試合は観戦されるということで、サッカー選手から見ても唸るようなコメントをされるようですが、この本ではそういうマニアックな側面は封印して、サッカー選手の人格的な部分にフォーカスした内容が多くなっています。

 ご自身の長年の芸能生活での経験と重ね合わせて、やっぱりサッカーでも人と人とのつながりが重要だということを強調されていて、如何に相手を活かすかということにココロを砕くことができる選手が成功していっているじゃないかということを指摘されています。

 小柳さんがサッカー好きだということを押し出して、メディアに進出することに否定的な人もいらっしゃるようですが、“素人”でもこういう楽しみ方ができるんだということを示しておられるようで、一定の重要な役割を果たしているんじゃないかと、ワタクシ自身は感じております。

 

日本史のなぞ/大澤真幸

 

 

 社会学の大家である大澤先生が歴史について語られるというのが意外なのですが、「知の怪人」佐藤優さんが推薦図書として取り上げられていたので、手に取らないワケにはいかないでしょ!?

 日本では“革命”が起こらない、ということが歴史学者の間でも議論されるのですが、なぜ日本では“革命”が起こらないのかということについて、大澤さん自身が日本での唯一の革命とする承久の乱の戦後処理を手掛かりに、なぜ日本では革命が起こらないのかを検証されます。

 その検証において、中国や西欧との比較をするワケなのですが、中国では“天”という概念、西欧ではキリストの事蹟といった、ある意味超越的な事象があって、その下で革命がおこるのですが、日本では、言ってみれば天皇制が、中国でいう“天”のような概
念を担っているということで、その存立を脅かそうとするモノがいなかったからだということです。

 大澤さんが唯一の革命の成功者だとする北条泰時にしても朝廷の権威を尊重した上で、そこから逸脱した後鳥羽上皇などを放逐したという位置づけで、言ってみれば“天”の秩序を守るためのことだったという理解がされているようです。

 ということで、日本の歴史を貫く原理のようなモノが語られていて、歴史を理解する上での“軸”みたいなものを提供してくれる重要な概念を見せてもらったような気がします。

 

ブラバン甲子園大研究/梅津有希子

 

高校野球を100倍楽しむ ブラバン甲子園大研究 (文春文庫)

高校野球を100倍楽しむ ブラバン甲子園大研究 (文春文庫)

 

 

 学生時代にブラバンの強豪校におられたライターの梅津さんが、甲子園で応援するブラバンの実態を紹介されます。

 2,3年前からNumber Webで梅津さんが甲子園で応援するブラバンのことを紹介するエッセイが掲載され始めて、ワタクシも気になって、野球もブラバンも名門だという習志野高校を見に、千葉県予選を見に行ったりもしたのですが…

 結構野球の強い高校とブラバンの強豪校って被ることが多いらしく、しかも甲子園の期間中に高校のブラバンのコンクールがあるということで、当然コンクールが優先されるのかと思いきや、結構ブラバンの高校生たちは甲子園での応援にもチカラを入れられていて、とてつもない掛け持ちみたいなこともあるようです。

 ブラバンでの野球の応援の歴史や、高校野球での応援の定番曲の紹介など、ちょっと高校野球の見方が変わりそうですが…ちなみにワタクシが習志野高校を見に行った時は、ブラバンの素晴らしさに圧倒され、応援の方が気になり過ぎて、野球を見るどころではありませんでした。

 今、ワタクシが単身赴任先で住んでいる千葉では、習志野高校だけではなく、拓大紅陵高校などブラバンでも名を馳せる高校が多いということで、ブラバンの応援を聞きに高校野球を見に行きたいですね。

 

やってはいけない老後対策/大村大次郎

 

 

 『あらゆる領収書は経費で落とせる』で知られる元国税調査官の大村さんによる老後対策指南です。

 さすがに元国税調査官だけあって、論拠を明確にした上での老後対策の節女が明快でナットク感の高い内容です。

 老後のためには3000万円の貯蓄が必要だとよく言われますが、大村さんによると、今後“人生100年時代”をアタマに置いた上で、95歳を寿命として対策を語られます。

 そんな中で年金と退職金を含めて一体いくら必要なのかと考えると3000万円の貯蓄というのはある程度弾頭性がある数字だということでなのですが、不足する分についての対策を主に紹介されます。

 よく言われるような株式や不動産への投資や退職金を元手にした起業などといったリスクを伴うモノは極力回避すべきだということで、主にプチ起業という、ほとんど元手をかけずに楽しみながら取り組める仕事を始めることを勧められています。

 そんな中で、プチ起業を法人化した場合の節税対策や、補助金の受け方など、大村さんの十八番も展開されます。

 ということで、結構役立つ小ネタも多いので、手を付けられるところからやってみれば、バカにならないチリツモになるような内容で地味に役立つ気がします。

 

仕事も人生も娯楽でいい/堀江貴文

 

仕事も人生も娯楽でいい (宝島社新書)

仕事も人生も娯楽でいい (宝島社新書)

 

 

 堀江さんがこれまでに出版された著書などから、テーマに合わせた“名言”を集めた本です。

 堀江さんはここのところ“一歩を踏み出す”ことを支援するための様々な取組をされていて、そういう趣旨の著書を続けて出版されていますが、この本でも如何に自分の好きなことをして、それをおカネに繋げるかということについて触れたコトバが多く紹介されています。

 多くの日本人は、受けてきた教育の中で、如何に従順な組織人として生きていくかということを“洗脳”されているので、一歩踏み出すためには“脱洗脳”が必要になるのですが、長年に渡る教育で数世代にわたって骨の髄まで染み渡った観念を取り除くのは容易なことではなく、堀江さんの金言を聞いても、ついついできない理由を探してしまいます。

 でも堀江さんは、ホントにやりたいと思っていることに没頭すれば食えない方がおかしいとおっしゃっていて、好きなことに専念することのパワーを強調されます。

 と、ここまで聞いても、ワタクシを含め多くの日本人が“一歩を踏み出せない”のはなぜなんでしょうかねぇ…

 

会社人生、五十路の壁/江上剛

 

 

 江上さんは49歳の時に銀行を辞められて作家になられたということなのですが、そのせいか50歳の人に向けての著書が多い気がするのですが、この本もそのうちの1冊のようです。

 50歳ともなると、会社での自分の立ち位置が望まなくてもよく見えるお年頃なワケで、それ故に様々な壁が合わられてくるのがわかるということで、それぞれの壁の正体を解き明かされます。

 この本の中で江上さんが再三言及されているのが、お母さまにご自身が繰り返し言われたことだということなのですが、“のに”に囚われないようにすることだということで、「こんなにガンバってきた“のに”報われない」といったグチで、まあ個々の事情は同情を禁じ得ないにしても、それに囚われ続けることで、思考が後ろ向きになってしまうので、そこに拘泥するのではなくて、起きたことは仕方ない、それよりも今後のことを如何に充実させるかということに集中すべきなんじゃないかということをおっしゃっています。

 人生100年時代と言うことが取り沙汰されるようになって、70歳まで働けるようにという法整備への準備も進められるようになり、以前とは違って50歳というのは“終わりの準備”ではなく、後半に向けた仕込みの時期だと位置づけるべきだということで、如何
にその後の人生を充実させるかという観点で取り組むことが重要なようです。