池上彰の世界から見る平成史/池上彰

 

池上彰の世界から見る平成史 (角川新書)

池上彰の世界から見る平成史 (角川新書)

 

 

 池上さんが平成の世を振り返ります。

 平成って様々な“終わり”から始まっていたんですね…平成が始まった当初から、東西冷戦の終わりや、バブルの終焉、55年体制の終焉といったように長らく続いていた秩序の終焉に彩られていたのが象徴的だったと、今振り返っても言えそうです。

 そんな中で、リーマンショックなどの世界的な金融危機が何度も起こったり、テロや内戦などの紛争も頻発し、国内では阪神大震災東日本大震災といった大規模の災害にも何度も襲われています。

 といった具合に、平穏無事を望んだ“平成”という元号とは裏腹に波乱万丈の30年だったことは皮肉だと言えますが、令和ではちょっとは落ち着いてくれるのでしょうか…

 

女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと/西原理恵子

 

女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと

女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと

 

 

 マンガ家の西原理恵子さんが、高校生の娘さんが反抗期になったのを期にされたのか、自分の半生を振り返りつつ、女の子の生き方のヒントを語られます。

 西原さんが生まれ育った高知のとある地方では、ダンナさんが奥さんに暴力を振るうということが多かったようで、暴力を振るわれた奥さんが子どもにツラく当たると傾向が強かったようで、西原さん自身、自分もそういう風になるんだろうか、と恐怖を感じられていたようです。

 そういった経験から、絵を描いて自分で稼いで生きて行こうと決意して上京し、成功をつかんだということなのですが、決して平坦な道のりだったワケではなく、アルコール依存症のご主人のDVに死ぬ思いをした時期があったということなのですが、それでも自分を取り戻すことができたのは、自分で“稼ぐ”ことができたからということです。

 どうしてもダンナに経済的に依存すると、不必要なガマンを強いられることも少なからずあり、少なくとも自分で“立って”いることができることで、いつでもダンナを“捨てる”という選択を持てるということがシアワセにつながる確率をあげることになるようです。

 未だに専業主婦への志向が根強くあるようですが、それはそれとして、すべての若い女性に一読してもらいたいところです。

 

逃げ出す勇気/ゆうきゆう

 

逃げ出す勇気 自分で自分を傷つけてしまう前に (角川新書)

逃げ出す勇気 自分で自分を傷つけてしまう前に (角川新書)

 

 

 精神科医でありながら漫画原作者でもあるという方の著書です。

 日本では「逃げ出す」ということはネガティブに捉えられて、耐え抜くことが美徳とされがちですが、やっぱりツラいことばかり続くとココロが折れてしまうのは弱いからというワケではなく言ってみれば当然のことであり、ツラい状態が続けば「逃げ出す」という勇気を持つことも重要なんだとおっしゃいます。

 あまりにツラい状況が続けば、完全に撤退することもモチロンアリなんですが、そこまで行かなくても、ずっとずっとその状態で向き合い続けるのではなく、ちょっと視線を逸らしてみるとか、見方を変えてみるとか、ココロが折れる前にやっておいたらいいことがたくさん紹介されています。

 やたらと精神論ばかりを振りかざすのではなく、やっぱり臨機応変の対応って重要なんですよねぇ…

 

心を折る上司/見波利幸

 

心を折る上司 (角川新書)

心を折る上司 (角川新書)

 

 

 日本でのメンタルヘルスの草分けの一人でもあり、企業でのカウンセリングや研修を手掛けらている方の著書です。

 タイトルだけ見ると、ブラックな上司の生態を描いている本のように思えますが、実際は、現代の企業において如何にして部下を育成していくのかということを扱われています。

 かつての米国追従型の高度経済成長期であれば、ひたすらモーレツにという画一的なスタイルを前面に押し出して、部下についてこさせるというカタチでもある程度の成果を残せたのかも知れませんが、志向の多様化した現代では部下がどういう方向を目指しているかとか、どういったところでスイッチが入るのかなどということを一人ひとり丹念に見極めて寄り添うような姿勢が必要だとおっしゃいます。

 かつてのモーレツ上司からすると、そんなメンドクサイことやってられないって思うかもしれませんが、誰でも自分がちゃんと見てもらえてて、尊重してもらっているということを感じられれば、意気に感じるということもあるでしょう!?

 ということで、やっぱり今後は如何に個々を尊重するのかということがキモみたいです。

 

定年後不安/大杉潤

 

定年後不安 人生100年時代の生き方 (角川新書)

定年後不安 人生100年時代の生き方 (角川新書)

 

 

 銀行勤務を経てコンサルタント、研修講師をされていて、ご自身も一旦会社勤務を終えてリタイアを経験された方の著書です。

 この本では85歳まで働くようにできることを推奨されているのですが、この本の著者の大杉さんはビジネス書や自己啓発書を熱心に読まれているということで、あちこちでそこから得た知識をちりばめようとして、せっかくのコンセプトが希薄になってしまっているように思えます。

 85歳まで段階的にスピードを落としながら働くという、今や結構多くの人が興味を示すであろう内容なので、もう少し煮詰めて焦点を定めてから出版してくれたらよかったのに、とちょっと残念な感じのする本でした。

 

同志社大学神学部/佐藤優

 

 

 「知の怪人」佐藤優さんの自伝的な内容で、大学時代から外交官試験に合格して卒業するまでを辿られます。

 別の著書で、自伝的なカタチを取っているが神学がどういうモノなのかがよく理解できるとおっしゃっていたので手に取ってみましたが、やはり、先日紹介した東欧・ソ連への旅行記である、『15の夏』同様、佐藤さんがどうやって「知の怪人・佐藤優」になっていったのかに興味がそそられます。

 ご自身が神学へ取り組んで行かれた過程に沿って、神学の沿革を紹介されているのですが、佐藤さんが多くの著書で再三、神学はに「生き方」を教えてくれる学問だとおっしゃっていますが、その中でも多くの学派みたいなものがあって、その中でも佐藤さんが、キリストの考えたことに近い現実を生きる人々に寄り添うような思想を選び取って行ったが故に、なおさらそう強調されるんだろうなと感じます。

 佐藤さんが大学生だった頃は学生運動が激しい頃で、佐藤さんご自身もマルクス主義的な考え方に傾倒していたことから多少の絡みはあったようですが、運動ありきであまり思考に重きを置かない趨勢に疑問を感じていたようで、あまり積極的には関わらなかったようです。

 それにしても、あの頃の“空気”なのかもしれませんが、ホントによくモノを考えていて、それを仲間と積極的にぶつけ合っているのが印象的です。

 そう考えると、佐藤さんの世代から10年程下ったワタクシの時期では既にここまでモノを考える風潮って薄れてましたし、仲間と議論をするなんて言うと浮いてしまいかねない状況だったのですが、今ってどうなんでしょうね!?…どんどん思考力が低下して行っていくようで空恐ろしい気がします。

 

中国新興企業の正体/沈才彬

 

中国新興企業の正体 (角川新書)

中国新興企業の正体 (角川新書)

 

 

 日本にいるといつ中国経済が破たんするかと言った論調の報道がいつまで経っても続いていますが、それってホントにそうなんだろうか、と個人的にはいつもタップリとマユにツバを塗って聞いていたりするんですが…

 この本では、アリババやテンセント、百度といった中国を代表する…どころか、今では世界を席巻するようにすらなった…企業の生い立ちを追い、なぜ中国が世界経済で重要な地位を占めるようになったのかを紹介されています。

 この本で紹介されているどの企業も、これまで満たされてこなかった顧客ニーズに素朴に向き合い、従来のしがらみや制約に囚われないビジネスモデルを実現したが故に、中国国内に留まらず、国際的な巨人である、GoogleFacebookUberなどといった企業に対抗して行けているんでしょうし、正に彼らのやっていることって“イノベーション”そのものだと言えそうです。

 どうしてもアメリカ陣営にいる日本においては、どうにかして中国がコケないか、という希望的観測でモノを見がちなところがあり、リアルなところが見えにくくなっているところが多分にあると思います。

 モチロンこの本も中国人が書いていることもあり、1から10まで真に受けるべきではないのかもしれませんが、コトバ半分に聞いたとしても、この本で紹介されている企業は、かつての日本やアメリカの企業が実現してきたようなような“イノベーション”を経て台頭してきており、各国間の垣根が著しく下がった現在のグローバルビジネスに場においては、世界を席巻したとしてもあまり不思議ではなくて、日本も、政界はともかく、経済界におけるアメリカ追従一辺倒のビジネスモデルは、最早潮時なのかも知れません。